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「言論の自由」とは何か(1)
2008年 11月 11日
またまた大仰なタイトルを付けてしまったが,記事の趣旨は「言論の自由にもいろいろある」ということを言いたいのではない.「言論の自由」の「運用」に関する問題を議論したいのである.きっかけは無論,あの田母神懸賞論文事件である.
前置き この懸賞論文事件はひょっとしたらこれからしばらくは国論を二分する騒ぎになるだろう.田母神氏の歴史認識自体はずっと以前から自虐史観派の人たちの怨念でもあるのでその議論の蒸し返しに過ぎないが,問題は航空幕僚長解任への反発である.従って,『言論の自由』と絡めて,きちんとした理論的考察が必要である.(それにしてもこの解任は自民党・麻生内閣にしては予想外の素早さだった.意外であった.この素早さだけには敬意を表しておく.) さて,「言論の自由」の「運用」とは何か?恐らく読者にとって初めて耳にする言葉に違いない.それもそのはず,これはパピヨンが最近になって勝手にひねり出した文句なのである. 「運用」ということを考えた発端は,以前のシリーズ記事,『科学と道徳(1)~(4)』に遡る.そこでは,『正しい【注1】道徳基準』というものは一体誰が決めるのか,について考察したのだが,要するに問題は, (1) 『正しい道徳基準』が先にあって,人々の行動規範はそれに従えば良い, という方向で行くべきなのか,あるいは逆に (2) 全体の合意形成によって,『正しい道徳基準』というものを作り上げていく べきなのか,ということであった.その結果は,(1)ではなくて(2)で行くほかはない,という結論に至った.その理由を端的に書けば, 『正しい道徳基準』というものが先にあっても,『そのあとはすべてマニュアル通り』というわけには行かないから ということになる.なぜなら,(1)の場合は正しい道徳基準を『誰が決めるのか』という超難問が依然として未解決であり,誰かが決めたとしたら市民の思考・苦吟の過程が省略されるからである.さらに,以下に見るように,市民の思考過程=なぜそれが正しいのかという苦吟がなされない価値観はとても脆いはずだからである. 例えば「基本的人権」.これは全体の合意を以って形成された,いわゆる『正しい道徳基準』の格好の例としていい概念である.しかし,人類はこの基準を手にすることが出来たのであるが,これですべて解決できるか,というとそうは行かないことがすぐ分かる. なぜなら,基本的人権同士がぶつかることがしょっちゅうあるからだ.そう,「被害者の人権」対「被告の人権」,「多数の幸福」対「個人の人権」,「言論の自由」対「基本的人権」等々,こちらを立てればあちらが立たず,という場面がしょっちゅう生じるからである.すなわち,「正しい道徳」が得られたからといって,各個の事情を抜きにして一般論で片付けることは出来ないのである. 従って,それぞれの事情を「基本的人権」に照らして慎重に判断すべきことが常に付いて廻ることになる.パピヨンはこれを「運用」と呼ぶことにしたのである. こういうことは庶民の思考訓練が出来ていなければ間違った方向に行く可能性が高い.それで何度も繰り返しでしつこいが,正しい道徳に到達してもそれで終わりではなく,それの「運用」のために常に思考・判断を行うことが必要だということを再度強調しておきたい. 懸賞論文事件 ということで,例によって前置きが長ーくなってしまったが,この記事では『言論の自由』について考えてみたいのである.言論の自由に関して生じる種々の問題は,この「運用」の問題だとパピヨンには思われる. 例の,田母神懸賞論文事件を考えてみよう.『言論の自由』という概念からすれば,『我が国が侵略国家だというのは濡れ衣である』などの一連の発言を許されないのはおかしいではないかと言えそうである. しかし,これは容易に分かるように『発言者の立場の問題』である.言い換えると,『言論の自由』とは,その主張を為したい人の立場によって『制限される』ということになる.ただし,これを『言論の自由』が成り立たないこともある,という風には捉えたくない.『制限付きの正しい道徳』とするのでは将来の恣意的な制限に繋がりかねないからだ.そうではなくて,こちらとあちらのどちらを立てるのか,というせめぎ合いの中の選択の結果としての制限でないといけない.(これが運用ということである.しつこいけど) さて,今回の事件でこのせめぎ合いを見てみよう.田母神氏は『村山談話を押し付けた言論封殺だ!』と息巻いている.しかし,『言論封殺』では断じてないのである.田母神氏のような立場の人が『なぜ言論に制限を受けるのか』というのは次のような別の『正しい道徳』と対立するからである.そして,我々は『運用によって=思考・吟味過程を経て』『田母神氏の言論の自由を捨てる』決断をしなければならないのである. (1) 航空幕僚長という立場(憲法上疑義のあるといわれる自衛隊でなくても,財務省のトップだって同じ事)は,国の行先に影響を与えうる権限を有する.そういう権限を有する限りは,その人の目指す方向が誤った方向でないのかどうかが根本的に重大事である.国民の死活問題に直結するからである. 論文で考えを表明したということは,国民をその方向に向けさせたい,という願望の現れであり,その願望を実現しようとしたことである.すると,根本的には日本国憲法の目指す方向と合致しているか,ということが吟味されるのであり,とりあえずは時の政権の目指す方向と合致しているかどうか,という問題である.幸いなことに,田母神氏の方向は,村山談話のおかげで現政権の目指す方向と異なったようだ.これでは,田母神氏の解任・更迭は全くやむを得ないものであった【注2,3】. (田母神氏には,民間人となった今からがんばりなさい,と言っておこう.) (2) 『言論の自由』は『憲法』の問題ともせめぎ合いを生じる.一般国民はそれこそ『自由に』憲法を批判してもよいが,公務員は99条により『憲法擁護義務』を負う.そこで,田母神氏のような歴史認識を公言することが憲法擁護義務違反になるかどうか憲法自身を調べてみたのだが,それらしきことは直接には書いてなかった.しかし,憲法の前文に以下のようにあった. 「・・・政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し・・・」 ここで,「一度政府の行為によって戦争の惨禍が起った」ということが読み取れる.つまり日本国憲法は『我が国は侵略国家だった』という基本認識に立っているのであり,田母神氏の歴史認識とは全く相容れないものである.よって,それを公言することは憲法擁護義務違反となる.これでは国民を導く立場にいること自体,許されないのである.公言したいのであれば自らその立場を捨て去るべきであったのだ. (不思議なことに,憲法には戦前への歴史評価を直接書いてある箇所がここしかないようである.しかし,戦前への反省の精神は憲法全体を貫いており,その精神上で書かれたものであるのは明らかであり,不文律としなければならない.憲法に直接明記してあればごたごたは生じなかったのだけど・・・) そもそも,「言論の自由」とは権力との戦いのために人類が得た武器なのである.田母神さんは自らが権力者側だったことを忘れてはいけない.一民間人となったからには,『村山談話』が強大な権力に見えるだろう.それと闘うために『言論の自由』がある.せいぜいがんばってください. 長くなったが,次稿では,『河野本道事件(アイヌ人権侵害事件)』,『柳美里さんの小説』,『ドイツにおけるナチス称揚禁止』,『ヘイトスピーチ』等々と『言論の自由』との関係を考えます. 【注1】 ここで「道徳」とは,人文科学的のみならず社会科学的に「望ましい」価値観,概念全体を言うことにします.例えば「民主主義」という価値概念も広く「道徳」と表現します. なお,『正しい』という言葉を気楽に考えてください.神の絶対基準のような正しさは我々にはわからないことです.『いわゆる』という枕詞をつけて考えるぐらいのものです.今の人類が考えて,ファシズムよりは民主主義が良いと思う,その程度の「正しさ」で十分です. 【注2】 このような,憲法違反を表明したり行った(擁護義務違反)公務員は,時の政府が罷免を果たせばよいが,もし今回にしても政府が更迭しなかったらどうすれば良いのだろう.その時は国民自身の手によって罷免を果たさねばならないが,その方法を我々国民は持っているのだろうか?憲法擁護義務違反である国民投票法案は早々と出来上がったのに,まったく話が逆だ! 【注3】 時の政府が憲法と異なる方向を目指していて,まっとうな方向の公務員を「方向が違う」という理由で罷免することがあってはならないのは当然である.憲法のほうが優先することは言うまでもない.
by papillon9999
| 2008-11-11 19:00
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