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チベット問題の考察(1)非難の矛先
2008年 04月 12日
チベット問題の解決はなかなか難しそうだ.ただ情報が錯綜して事実関係があいまいなままテレビ映像だけで判断を下すのは大きな間違いの元となる.そうは言っても,現状では中国政府の一方的な決めつけ(ダライ・ラマの煽動など)と抗議を寄せ付けない強硬な姿勢が,世界中の反感を喚起するのに十分役に立っているようだ.
今でも情報が不十分である状況は変わらないが,成田に立ち寄ったダライ・ラマ氏をテレビで見て,私も少し考えがまとまってきた.この件で中国非難の声を直ちに上げないのはダブルスタンダードだ,と思われる方も多いと思う.米国のイラク攻撃には躊躇なくブッシュ非難の声をぶつけながら,中国へのこの態度は何だ!ということだろう.無論私もどこかの国だけをえこひいきする立場の人間ではないから,どの国にも公平に判断を下したいと願っている. だけど,中国への非難は一体何に対して行われるべきか,ということが,実は思ったほど明らかではないのではないだろうか. ・かつてチベットを侵略し,今なおチベットの独立や自由を奪っていることか? ・チベットとの話合いを始めない強硬な姿勢に対してか? ・暴動を武力で鎮圧しようとしていることか? ・多数の死傷者を出した(と言われる)ことか? ・報道の規制を行い,正確な情報を隠蔽しようとしていることか? 本稿はこれらの問に応える形でチベット問題について考察を進めたい.そして,解決のためににはどうするべきか,あるいは何が解決を阻害しているのか,を突き止めようと思う.そして双方にとってベストの状態というものを展望し,イメージしてみたい. 記録が手元になくて事実関係のトレースができないので,大体の流れの記憶で記述することをお断りしておく.議論の中身にはさほど影響ないはずだ. 1.武力による暴動鎮圧と死傷者について まず,事実確認.初めはチベット人による暴動の勃発である.明らかに単なるデモのようなものではなく,暴動であったことは間違いないようだ.暴動の原因はチベット人への抑圧(長年にわたる鬱積があった)に対する反乱である.北京五輪の聖火儀式の直前という,最も効果の高い時期を意識して行われた.暴動はチベット国内だけではなく,四川省その他の中国国内にもあちこちに飛び火した.これに対し,中国政府は軍隊を以って暴動鎮圧に乗り出した.これらの結果,多くの死傷者が出た.ただし,情報が錯綜しているため正確な人数と情報の真偽はわからない.また.死傷者の内訳も死因も今ひとつはっきりしない. 以上のことがその通りであれば,次のように言える.まず,軍隊を用いた武力鎮圧はその暴動を鎮圧する限りはその国の権利であり内政問題である.その武力鎮圧が単なるデモ隊に向けて乱射するような非道なことでない限りは,軍隊が乗り出すのを非難はできない.一種の内乱状態になるのを防ぐのはどの国にとっても最優先事項であり,放っておいたらもっと悲惨な事態に繋がる可能性だってあるからである.(軍隊とは国内向けにはそのような役目のものであるとも言える.だから軍隊の存在自体への批判はチベット問題とは別の話である). ただし,その暴動を誘起した事態の存在責任とそれの解決責任は厳然としてある.今回のことで言えば,中国政府にはそのような暴動に恃んでまでも世界に訴えたかったことを放置していた責任があるのであり,これからそれを解決する責任も有するのである.非難はそこに向けられなければならない. もう一つ重大な責任がある.それは,鎮圧に際して銃器や戦車等,圧倒的に優勢な武力を以って丸腰の(石と火炎瓶だけの)市民に向けて恣意的に乱射し,何千人,何万人もの人々(いやたとえ一人であっても)を殺害するということは断じて許されない,ということである. 今回の報道で今ひとつはっきりしないのが,多数の死傷者が誰で,その加害者は誰か,という点である.(私は今以て情報がない).わずかに,七十名程度の漢人がチベット人に殺害された,ということぐらいである.もし,中国軍がチベット人を大量に殺害していたとしたら,これはとんでもない蛮行であり五輪開催資格どころの話ではない.ならばこの逆もまたそうである. 2.中国政府は報道を規制するな 上述したように,死傷者に関する情報の必要性は大きい.もし中国側にやましい点が無いのであれば,積極的に外国の報道陣を入れ世界に向けて発信してもらうべきだ.今回の件で報道の規制が全く無いようには感じられない.この点が全世界から疑惑の眼で見られる最大の要因であろう. 全面的な報道解禁をやりたくない中国側の心配事を忖度してみると,まずは大多数のチベット人の要求が『チベット独立』であったら困る,というのであろうか.しかしそれは後で書くように,チベット独立は無理だということを世界に納得させれば済むことである.その説得は困難ではないと思う.とにかく,不都合な点があるからといって報道規制をかけること自体が三流国に過ぎない証とされる.この点を中国政府は楽観しては致命的打撃を受ける. もちろん,外国メディアが側が逆に歪めて(中国を中傷するように)編集する,というのがあれば論外だが,まさかそれを心配しているわけではないだろう. もう一つ中国政府が報道を恐れる理由として想像されることは,チベット人抑圧の実態を知られることである.チベット人達の訴え,『チベットに自由を!』という合言葉がわずかに報道でも流れてくるが,実は,どのような抑圧の実態が生じているのか我々にはよくわからないのである.これが報道規制の所為なのかどうか,私の怠慢ゆえなのかよくわからない.しかし,国外にもチベット人は多数いるのだから,実態は伝わっていてもいいはずだけど,情報があまり無いのはどうしてだろう. 3.チベット独立と話合い 世界中の心ある人が一番願っているのが,中国政府とチベット側(ダライ・ラマになるのだろう)との話合いであろう.それを強く望むのは私も同じだ.ところがよく考えると,一体どういう成果を期待できるのか,という展望を欠いていれば,話合いにはほとんど意味はないだろうと思えるのだ.話合いのテーブルに着くこと自体に意味があると言えなくもないが,単なるそれでは中国政府のアリバイ作りに役立つだけで,チベットにとっては何も進展はないだろう.つまり,話合いはしました,その結果は従来のままです,となる可能性も十分にある. そこで問題は,どのような展望があるのか,ということになる.そんなことは当事者同士で話し合えばよいこと,それこそ内政問題である,とするのはすでに中国政府寄りの立場である.それこそ大国と小国,対等関係での話合いにはなりえないからだ(今の状況はその反映であろう).そのため,どういう状況が双方にとってベストの状態かを,世界もこの両者と一緒になって展望しイメージする必要があるのだ. それにも拘らず,上にも書いたように私にはチベット独立が最良だとは思えない.もちろん,中国政府がそれを認める可能性があるならばそれがベストだと思うが,それは100%無い,という状況を前提(なぜなら経済的価値を中国政府は認識しており,手放すわけにはいかない)としての話である.かつてチベットを侵略して併合したとたとえ認定しても,もう今となってはその当時の状態に戻せ,というわけにはいかないだろう.チベットが中国の支配下に入るのは今の中国政府(いわゆる中華人民共和国)が初めてではなく,歴史的なものであったからだ.(この歴史認識で良いだろうか?) 独立以外にどういう問題があるかと言えば,それは文化の問題である.文化の問題が厄介なのは,双方に悪意が無くても互いに異物となってしまうことである.私はこの問題が独立の問題を超えて最大の障害だと思っている.チベット人たちの合言葉,『チベットに自由を!』に象徴される齟齬もひょっとしたらそこに源流があるのかもしれないと思う.次回にそれらを考察したい. つづく
by papillon9999
| 2008-04-12 09:59
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Comments(5)
お久しぶりです。
やっと、チベット問題を書かれましたね(^^;。 >軍隊が乗り出すのを非難はできない 普通は警察による催涙弾と放水でしょう。 それがいきなり軍隊が出てくるところが中国らしい、と言いたいところですが、今回はタイミングがタイミングです。そんなことぐらい中国政府もわかっていたはずです。いくらなんでもそこまでアホじゃないでしょう。 それを考えると何なんでしょうね。 もしかしたら、中国政府は武装蜂起を想定したのかも知れません。 実際、海外にはそういう見方があるようです。 >この点を中国政府は楽観しては致命的打撃を受ける. 批判されたので、事件後に記者ら視察団を入れたようですよ。 共同通信記者によると自由に取材できたそうです。 その取材の結果がどうだったのかというのが、さっぱり報道されないのがなんとも不可解です。 結局、事件の真相はわからずじまいに終わるのではないでしょうか。
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どうもこんにちわ.
>やっとチベット問題 どうも情況がよく掴めなくて判断できませんでした. >軍隊・・・ 最初は警察が出たのではないですかね.そして直感的に軍隊が必要だと判断したようです(上海出身者の話) >視察団 外国の取材陣の報道がイマイチ伝わってきませんね.書くべきことがあまりないのでしょうか?(つまり中国の悪口を書く余地があまりない???) 『チベットに自由を!』が訴えたい『不自由さとは何か』がイマイチはっきりしてないように思いませんか? 「ありがた迷惑な押し付けをやめてくれ!」という程度ならまだ救いはあるような気がするのですがねぇ・・・
海外情報では優秀な師団が待機していたというのがあるのです。
もし、そうなら事前に情報を掴んでいて警戒していたのかも知れません。 >外国の取材陣の報道がイマイチ伝わってきませんね. 中国側が何をしたのかについては、わりと報道されているのですが、チベット側が何をしたのかがわからないですね。 日本人も含めて滞在していた外国人(一般市民)からの目撃証言もあり、チベット側が一般市民に対して暴行をはたらいたことは間違いなさそうですが、そこへ至った経緯が不明確です。 >訴えたい『不自由さとは何か』がイマイチはっきりしてないように思いませんか? 「我々は経済成長の恩恵を受けていない」という主張を聞くと、「なるほど」と思うのですが、その一方で、「我々は物質的繁栄には興味がない」と聞くと、「アレッ?」と思ってしまいますね。 普通はこういう抗議行動の場合は、リーダーから声明文というものが発表されるものなのですが、チベット問題の場合は、いつも、ダライ・ラマが映るだけで、そのダライ・ラマはというと、「暴力反対、独立不要、五輪賛成、おまけに、開会式歓迎」ということですからね。
そうそう,リーダーというものの姿が見えない,ほんとだ.これはどういう意味なんでしょうねぇ.ダライラマの遠隔操作があるとは思えませんがねぇ.でも最も効果的な時期を選んで一斉に蜂起している.少なくとも連絡・調整はあったでしょう.
こんな記事が出てました。
米国議会のレポートなんだそうです。 http://sankei.jp.msn.com/world/america/080417/amr0804171839013-n1.htm CIAが援助しているとされている組織もありますね。 |

