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信念と美学(1) ファシズムはロマンとともにやって来る
2007年 11月 11日
今日は久しぶりに家にいて,朝も起きたのは10時半だった.もっとも,朝の6時過ぎに一度起きて,大量のしっこを気持ちよく流したのだったが.その後,再び暖ったかな布団に戻り,いつのまにかわけのわからない夢の世界に浸っていた.
実は最近,突然血尿が出て,怖いので調べてもらったら,左の腎臓から少し出たあたりの尿管中に5ミリほどの石ができていることがわかった.それでこのところ毎日大量のお茶を飲みながら,尿管を緩める薬を飲んでいる.おかげで,かなり頻繁にトイレのお世話になるのだが,今のところ気持ちよい放尿ができている.おっと,こんな話は別の機会にしよう.そういえば妻の話もまだだった・・・ ところで,今日の話は何だったっけ?そうそう,毎日新聞の日曜書評欄だった.それを見たために,先日来宿題の気分でいた課題についてようやくまとめる気持ちになったのであった.その書物とは「西田税と日本ファシズム運動」,著者:堀真清,岩波書店,評者:山内昌之,である. 書評によれば,西田税(にしだみつぐ)という人は二二六事件の精神的な支柱の一人だったそうである.そして,『この本の著者は,ファシズム運動の始まりを,1934年4月の,西田と北一輝との邂逅に求めている』,とあった.恥ずかしながら西田税という人を私は全然知らなかった.それに加えて,著者の堀真清氏が二二六事件の研究者(らしい)ことも知らなかったし,山内氏だってやたら政府委員に名を連ねているということぐらいしか知らないのである.そういうなじみのない人達が絡んでいるものにどうして関心が向いたのか.実は,今日の記事はこの本,ないしは書評自体が題材ではなく,単なるきっかけにすぎない 実は,この書評をチラッと読んでピンと来るものがあった.前々から喉元まで来ているのに出てこなかったのであるが,それはファシズム思想は一つの美学だ!,ということに思い当たったのだ.ひょっとしたらこのことはとっくに指摘している人がいると思うが,その美学・それを成就させようと夢見るロマンこそは,キー概念として通底しているのではないか,ということである.何と通底しているのかというと,最近の私の記事の主題であった,信念とか智の暴走とか信念のフリーズといったものとである. そう,果たして「ファシズムはロマン」だろうか? 確かに,戦前の大陸侵略を主導した軍部や追従した国民達は旧満州の壮大な平原に『五族協和の王道楽土』の夢を見た.これが壮大なロマンでなくてなんだろう.欧米の『覇道』ではなく『王道』で協和的なユートピア国家を建設するのだ.心ある者ほどこの実現に向けて胸をロマンでいっぱいにしていたに違いない. ところが,このロマン自体がいかに独りよがりで他の民族にとってはきわめて迷惑千万な夢想であるか,ということについて,ロマンを胸に抱いている人たちには到底考え及ぶべくもなかっただろう.重要なことは,どうしてこのような事態に陥ってしまったのか,そのメカニズムや構造を明らかにすることだと思われる. これは,多分,次のようなことではなかったろうか.西田税のような一歩進んだ思想家がとても素晴らしいロマンに目覚める.ここで言えば王道楽土の建設である.西田自身はきわめて真摯に,熱っぽく誠を持って説いてまわる.すると,それに激しく共鳴する人たちが増える.そのうち,そういう人が多数を占めるようになるかもしれない. この過程で起きることを想像してみよう.その彼らにとって素晴らしいロマンを実現するためには,非常な副作用があるものとする.しかし,彼らにとってはそんなことはロマンの素晴らしさに比べたら瑣末事として無視するか思い浮かべることさえしないはずだ.そしてその副作用を指摘する人に対して,物凄い嫌悪感を抱くようになるだろう.実力を持っていたら,邪魔者として強制力で排除しようとする. 無論,このような『真面目なロマンチスト』だけではない.そのロマン実現は自分に有利と見て打算的に加担する人が多く出現するだろう.いや,「ロマン」を積極的に作り出し,それを悪利用する悪賢い輩が必ずいるものだ.これは経済的な側面もあるし,征服欲・支配欲のような側面もある. 一方,副作用がとても深刻であることに気づいた人々ももちろんいるのだが,その人々はどうするだろう.国全体の雰囲気がロマン実現にまい進して行くようになったら,自ら自分を騙し始めるに違いない.副作用には目をつぶりそのロマンに自ら身を捧げるのである.それも自分自身でそれを許す論理,副作用は大したことではない,むしろ彼ら(他の民族)もそれが結局幸せなのだ,などといった捏造論理を構築し始めるのだ.きっと.そういうふうに同調しない人は監獄へ行って獄死の運命となる. 以上は非常に模式的に描いたものなので,単純化しすぎているのは百も承知であるが,非常に大雑把な近似としては成り立っているように思えてならない.このような道を歩んでいく前に何が何でも止めなくてはならないのだ.それには一体どうしたらいいのか,それこそがまさに憲法9条の精神を活かすことに連なってくるはずだが,長くなったので信念とフリーズの話とともに次回に回す. ところで,我々は最近,ある素晴らしいロマンを聴かされた.そう,『美しい国』である.しかし,ロマンを感じさせる言葉,あるいはロマンという響きの良い言葉そのものに価値を置く言動自体に対して,十分心して吟味する必要がある.「太古のロマン」ならいい.しかし,「美しい国づくりのロマン」,「国際貢献のロマン」,「東京五輪のロマン」等々となるとこれはもう・・眉に唾をつけよう. 最近の標語で,「ファシズムは笑顔とともにやってくる」,というのがあった(ちょっと違うかな,笑顔ではないかもしれないが). 私は言いたい. 『ファシズムはロマンとともにやってくる』 『ファシズムはロマンを掻き立てやってくる』
by papillon9999
| 2007-11-11 16:11
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Comments(14)
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布引洋
at 2007-11-12 09:46
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全く其のとうりです。政治経済学学上はファシズムが『究極の資本主義』であることは事実ですが、発生時点(出発点)においては政治経済的背景よりも観念的な美意識やロマンを因り強く感じますね。美しくないとファシズムと呼べないくらいに。
其れと未発達ながら民主主義。 なにしろ孫文の日本亡命中に支援したのが大アジア主義のファシズム勢力ですからね。 民主主義以前にファシズムは無かった。 逆説的には、民主主義が、『自由からの逃避』であるファシズムを生んだとも言える。 完全なる民主主義には、完全に自立した自己(個人)が絶対に必要で民主主義社会成立のが前提条件。 未熟な自立できない自己(個人)にとっては民主主義は大きな負担になり精神的不安定、不安になる。 日本の軍国主義がマゾヒズムでドイツのファシズムがサディズムとの対比があるようです。 自立できない未熟な自己の日本人が他者に従属、自己と他者とを同一視(融合)して精神的安定を得た。 両者の違いは、個人主義のドイツ人と、まだ家族主義が生きていた日本の、その置かれていた条件の差によるのではないでしょか。
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papillon9999 at 2007-11-12 11:29
そうですね.民主主義と結託する,というのはとても重要な視点だと思います.なぜ民主的にファシズムにいけるのか,そこには庶民の「ロマン」をくすぐり,庶民自らロマン実現にまい進していく構図がありそうです.
日本型ファシズムは上から煽動して,未熟な庶民が乗せられる,欧米型は成熟した市民がより先鋭的になっていく,という違いも見えそうです.
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布引洋
at 2007-11-12 11:40
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美意識やロマン以上にファシズムにとって大切なのは権威と道徳、治安への不安、他者(外国)への不安や恐怖、愛国心と書き連ねちいたら突然安倍晋三を思い出した。
安倍内閣は間違いなくファシストの政権でしたね。まだ良く解らないが後継政権の福田内閣も可能性は有る。 ファシズムの宗教的側面を共産党を含む左翼護憲派は軽視している傾向があるようです。 日本軍国主義に靖国神社(国家神道)がもしも無かったならば、果たして成立していたでしょうか。? もしもドイツにキリスト教が無かったならユダヤ人や共産党員(無神論者)の大虐殺が起こったでしょうか。? ファシズムの宗教的側面を無視すると大きな勘違いを犯すでしょう。 第二次世界大戦(特にドイツにおいて)は帝国主義戦争であると共に宗教戦争の側面を持っていた事実を無視する訳にはいかない。 リチャード・ドーキンス「神は妄想である―宗教との決別 」を読みましたか。 一流学者、知性有る人物の罵詈雑言、悪口は切れ味抜群で実に爽快。
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papillon9999 at 2007-11-12 12:29
うーむ,さすがは布引さん!宗教的側面を忘れてはいけません!これはファシズムの不合理性を覆い隠すのに重要な役目を果たすのではないでしょうか.その結果,より多くの不合理性,悲惨さを産み出す.ロマンは入口で,その副作用を合理化させる装置として宗教的なものが不可欠になるのではないか,という気がします.いろいろ複雑な絡み合いがあるでしょうが,両輪のようなものでしょうか.
リチャードドーキンス,名前は聞いたことがあるような・・でもご紹介の本はもちろん?読んでません.そうですか.ぜひ読んでみます.
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papillon9999 at 2007-11-12 14:10
リチャードドーキンス.「利己的な遺伝子」の著者ですね.この本は買ってますが読んでません^o^/ これは遺伝子至上主義でちょっと違和感があります.Ladybirdさん,いかがでしょう?
ファシズムは学生の頃、かなり研究しました。ドイツの1930年代の政治史は専門分野の一つだったので。 さて、古くは新撰組などは、典型的なファシズムの特徴をかねそなえているのですが、彼らがロマンチックにこんにちでも語られることと重ね合わせながら記事を興味深く拝読させていただきました。
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at 2007-11-13 00:40
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
「利己的な遺伝子」では,ドーキンスは教科書に書かれていることを,よりハッキリ述べただけです.しかし多くの人があいまいにして来た点を,「遺伝子は利己的」という表現でしっかり確認させた点で,影響は(反発も)大きかったと思います.
最初の訳本が出たときの日本語タイトルは「生物=生存機械論」でした.原著のタイトルの直訳が「利己的な遺伝子」です.この方が著書の本質をついていますが,訳者でさえ最初は「生存機械」のほうに気をとられたのかもしれません.「遺伝子至上主義」という批判も,そのあたりの誤解があるのでないでしょうか. ついでに雑談ですが,レーチェル・カーソンの「沈黙の春」は最初の訳本のタイトルは「生と死の妙薬」となっていました.この日本語タイトルは大失敗でした.どうして原題(Silent spring)を素直に出さなかったのか,不思議なことです.
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Ladybird
at 2007-11-13 09:21
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たびたびすみません.少し補足します.
現代生物学では遺伝子の役割が非常に大きくなっています.遺伝子以外の何かの原理を探そうという試みは,あまり成功していません.Goodwin, B. (1994) "How the leopard changed its spots"という本などは,そういう方向への最後のあがきでしょう.好著ですが,日本語の訳本は「遺伝子だけですべては決まらない」だったかという月並みなタイトルで,訳文はほとんど解読不能というようなひどい出来でした.残念です.なぜなら,この方向がもっと議論され,追求されても良いと私は感じているからです.
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布引洋
at 2007-11-13 11:49
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>ファシズムはロマンを掻き立
今では超国家主義として忘れ去られていますが「日本浪漫派」の学徒動員生達に対する影響力は多大なものがあったようです。 日本浪漫派と京都学派の、当時の知識層に与えた影響力(戦争協力)は日本型ファシズムの成立に無くてはなら無いものだった。 極めつけの美辞麗句で飾り立てた超国家主義の日本浪漫派の手法は三島由紀夫で完成され自衛隊治安出動(クーデター)教唆から割腹自殺へと至るわけです。
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papillon9999 at 2007-11-13 19:11
薩摩長州さん コメントありがとうございます.新撰組の話!そうですね.たいてい,ロマンに彩られています.ご指摘ありがとうございました.
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papillon9999 at 2007-11-13 19:16
Ladybirdさん いろいろありがとうございます.沈黙の春の初代訳題はそうだったのですか.センセーションを狙ったんですかね.
遺伝子至上主義と感じるのは,あたかも遺伝子がインテリジェンスを持っているかのように取り扱ってるような気がするからです.これはやはり行き過ぎでしょう? 「遺伝子以外の何かの原理」!これは面白そう!よだれが出てきます.推理小説の乗りですが^o^;) Goodwinの本で味わえるでしょうか.
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papillon9999 at 2007-11-13 19:19
布引さん このご指摘も貴重ですね.ほんとに三島美学.私も一部これを想いながら書いていました.ご指摘の点,きちんと見直したいです.
遺伝子がインテリジェンス: そうですね.生物は遺伝子というインベーダーが操る乗り物,という比喩に引きずられてしまうんですよね.
グッドウインの本は「DNAだけで生命は解けない」というタイトルでした.失礼しました. |