韓国大邱にて

　一年前の韓国大邱（てぐ）．私の義理の親分，崔先生のお見舞いに行った．その前年，年も押し詰まった頃，崔先生は脳梗塞に倒れた．幸い最後の大事には至らずに済んだ．その後のリハビリでだいぶ回復されたようなので，崔先生のたっての誘いもあって，遅くなったお見舞いにようやく出かけた次第なのだ．



　崔先生の家で妹夫婦，息子夫婦，そろっての大歓迎の晩餐があって，一夜明けた朝，ＮＨＫのテレビを見た．すると，ちょうど映っていたのがＪＲ西日本の尼崎事故だった．車両のすさまじい変形に驚きながら，被害者がどこまで増えるだろうか，と崔先生たちと心配しながら見ていた．
　その日は大邱から東海岸の鄙びた漁村へ出かけ，日本海（韓国では東海『とんへ』）を身ながら鮮魚料理を堪能することになっていた．場所は浦項（ポハン）と慰山（ウルサン）の間くらい，そして韓国本土で一番早く朝日が拝める場所にも近いところだ．そこは海岸そばの海中に，大きな手がじゃんけんのグーをしてにょっきり立っている．韓国独特の感覚だ．

　さて，その日の午餐で鮮魚料理を堪能している最中，マッカリをやりながら，崔先生の息子がつと身構えて，私に問いかけた．

　「竹島についてどう思いますか」

　私はそれまでの愉快な気分がふっと途切れたような感じがした．ちょうど映画を見ていてフィルムが切れた時のような感じだ．そしてモゴモゴと口がなった．恥ずかしいことに竹島のことは全然考えたことがなく，何にも知らなかったのである．だから何も言えるはずがない．私は辛うじて言った．

　「なんか難しいですねぇ」

　すると彼はなんかがっかりした顔になって，なんとか言っていた．よく憶えていない．妹の主人も言った．「あそこは韓国のものです．」理由も何か言ったかもしれない．私はわずか一年前は１９０５年に島根県に編入されたことも知らなかったのだ．私は口をモゴモゴさせるばかりであったが，結局こう言った．

　「共同管理できないのでしょうかねぇ」

　崔先生は私が何を言っても大体わかってくれる．それだけの信頼関係を築いているからだ．この時は．なんと図々しい，と思われたに違いないのだが，「ハッハッハ」と笑っただけだった．
　韓国人は心底から韓国領だと信じている．しかし，日本がきちんと申し込めば共同管理を受け入れる余地はあると思う．もちろん，面子と交渉テクニックの問題で，こちらから申し込むことはないだろうが．
　私は正直言ってどちらに分があるかわからない．（本音をいえば○○かなと思う．なぜならやはり島根県編入が○○○○の狼煙だったと思うからだ）．
　実は私にとってはどちらの領土でも構わない．ただ漁民が安全に操業できるならばだ．私には何の利益もないからだ．どうせ石油かなにかが出たとしても，それはその会社が儲かるだけで私には何の利益もない．自民党に献金が増えるだけだろう．石油で儲かって税金が安くなるなら，韓国にも与えていいだろう．共同管理で十分ではないか．
　日韓双方が熱くなって，どちらも引けなくなったら本当に怖い．小泉・安倍・石原の単細胞連合軍に国民が乗せられるとあっという間に危険な情況になる，
　日韓中，それぞれ似ているではないか．元々互いに血はかなり交じり合ってる筈だ．どんぐりの背比べをしてどうなる．中学校時代に隣のクラスと何かを競争したことがあった？どうだった？そう，勝ったの？それがどうした？