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競争を降りる若者たち
2010年 11月 24日
ある初秋の一日,いつもの飲み屋で二人杯を交わした時の話である。
彼には息子がいた。長男だけれども3人兄弟の末っ子。つまり,上に姉二人がいる。しかし,ここでの話にはそんな環境はたぶん関係ないだろう。パピヨンの一家とは,姉三人と二人の違いだけで大変よく似ている。 だからなのか,偶然飲み屋でご近所さんになったのだが妙に波長が合って,もう二十年以上もの飲み屋だけの親友関係を続けている。 その息子は小さい頃から実に可愛かった。まつ毛が長く目が大きく,何かに例えるとすればハリーポッターのハーマイオニーのようであった。いや,彼女を少し男っぽくしたような感じ,というのが最も良い表現に思われる。 小学生ぐらいまでは愛情満帆で育った。それは基本的に現在まで続いているとは彼の判断である。しかし,息子本人の心の中ではどう思っていたのか,それは神にしかわからぬことではあろう。その程度には彼は客観視できる男である。 そういう感じのまま高校生となり背丈も父親を越えた。だが,高校(公立)に入ってしばらくした頃から何となく元気がなくなってきたのだそうだ。そして3年生になってから,急激に休みが増えてきた。 もちろん,いじめがないかどうか,注意して見ていたらしいのだが,どうもそれではなさそうであった。虚弱感を与えるような感じではなかったし,運動も結構できた。それに友人も何人かいて,時々家に遊びに来たり,まあそういうことからの判断だけど,たぶん,いじめではなかったと彼は確信している。 だが,もうその頃はすでに父親と息子との対話は途絶えていたという。もし自分に何かができたとすれば,その頃,十分な対話をなすべきであったろうと,彼は今では後悔とともに思っている。 高校では卒業も危うくなりかけたが,なんとか出席日数の帳尻を合わせてもらって卒業することはできた。 高校卒業の時に大学入試を形だけ受けたそうだが,無論,合格はできるはずもなかった。そもそも第一希望がなんであるか,息子も彼もわからなかったらしい。 1年間浪人をした末,翌年,自宅通学できるある国立大学に入学した。それが3年前のことである。これで最初の関門は乗り越えた,やれやれ,と彼は胸を撫で下ろした。それはつい昨日のことのよう感じられるという。 ただし,断わっておくが,彼は息子に対し,「良い大学に入って良い就職をしなければ自分が困るぞ」などとは,一度も口にしたことはないという。そういう男だ。実は彼自身もある大学教授なのであり,大学生の不勉強ぶりを見て大学なんぞちっとも役に立たんと思っているのである。 「そんなことを言っても,父親は大学教授だし,本人は無言のプレッシャーを感じていたかもしれないジャン」というパピヨンのコメントに対しては, 「いや,そんな大学教授なんぞにリスペクトを感じるような家庭ではない。何といっても娘たちが父を父とも思わぬ好き勝手な生き方をしてるんだ(苦笑)」 といった感じなので,多分,プレッシャーというのも考えにくいと思われるのだ。 ただ,奥さんは違っていたらしい。やはりちゃんとした大学を出なくちゃどうしようもないわよ!という主義で,母と息子は頻繁に口論を繰り返していたらしい。 「どうも・・・」と彼は言う。 「アニメの世界へ行きたかったのではないかと思うんだよな。・・・だって,しょっちゅう,少女アニメを見てるんだから。もう信じられん。」 「プリキュアとか?」 「そうそう,それ以外にもわんさとあるんだよ,これが!」 プリキュアと言えば,うちの孫のあのマルコが一時ハマっていたのでパピヨンはよく知っている。しかし,マルコすらそれはもう卒業したのではなかったかいな?小学二年になってるけど。 「それを大学生あたりが真剣に見てるんだよ・・・」 「そうなん?うちの息子は全然違うけどなあ・・想像できん」 大学入学は新たな難路のスタート地点だった。大学に入ってものの1ヶ月も経たないうちに,高校3年の頃と同じような状況が出来したのだ。通学の意志が目に見えて無くなって行ったのだった。母親はそういうことには非常に敏感で,早い段階からこまごまと注意を始めていたらしい。高校の時に学校に行かせるのにだいぶ苦労したので,母としてはもう繰り返してほしくなかったのだ。だが,あまり効果はなく,一年次,二年次となっても修得単位はあまり増えなかった。 「しょっちゅう,あなたからも言ってよ!!とお鉢が回ってくるんだよ。でもこんなことは本人がその気にならなくちゃどうにもならないんだよね。言ったってしょうがないんだよ。よほど名言でも吐けば別なんだろうけど。」 言ってることはパピヨンにもわかる。馬を水場に連れて行くことはできるが水を飲むか飲まないかは馬次第だ。 「それでも時々は息子のベッドまで行って,何で学校行かないんだ,と問い詰める羽目になるんだ。そのたんびに,多くは無言,時にはすごい眼で『うるせえ!』という罵声が返ってきたりするんだよ。でも実力を行使する気にはならないんだ。」 「えー??あの女の子のように可愛かったあの子がそんな風になったんだぁ まあ,うちも同じだけどね。特に娘がひどかった!」 「それで,何か最近,特別のことがあったん?」とパピヨンが聞いた。 「そう,ついこの前,とうとう,最後通牒を突きつけることになった。」 「そうか,一度休学までして復帰したんだったね。学業貫徹の約束で復学したんだったろ?」 「そう,すき家なんかでバイトして,現場の苦労を思い知ったはずなんだが,新学期が始まったっつうのに全然変化が見られないから,妻(母親)がとうとう最後通牒の話をつけてよ!となったわけだ。」 その息子は学校は行かないけどいわゆる閉じこもりではない。 「最後通牒ちゅうと退学?」 「そう,ずいぶん前から,学校行かないんだったら退学して働け!と言ってきたんだよね。現場の苦労を知って,大学の意味を悟ったようなことを言ってたらしいんだが,どうも体がついていかなかったらしいね。」 「すると,どういう反応だった?」 「そう,初めての反応が返ってきたんだ。今までと全く違った。初めて自分の口から,『やめる』と言ったんだ。しかし,その言い方なんだよ,驚いたのは・・・ 実に静かだった・・・ いつものような反発の調子じゃないんだよ・・・ かといって,何かに気負った決意が込められた調子でもない・・・」 「ふーん・・・・」 「実は息子の眼を見てたんだ。ちょうど左斜め前から見る方向で・・・ その眼は我々ではなくて遠くを見ていた。でも虚ろな目ではない,何かを見ている眼だった,確かに。 その時,ハッと気がついたことがあったんだ・・ その眼はなんと・・実にきれいに澄んでいた・・・ そしてそれは幼い頃のまんまだったじゃないか! だけど・・・ずいぶん長いことそれを見てなかった・・・ それにハッと気がついたんだ」 彼はそこで急に涙声になった。でも続けた。 「いやあ,あの眼を見なければよかった・・・何とも不憫でならんのだ・・・」 彼が言うには,息子の眼は,この先の希望も何も宿しておらず,荒波に立ち向かうという気負いもなかった。しかしながら,別に何かを恐れているような眼でもなかった。 それこそ,純粋に何かを見ている,という表現しかできない,彼はそのように表現してパピヨンに伝えてくれた。そして, 「ホンットにきれいに澄んでるんだ。眼を見るのではなかった・・・」 そう言って,しばらく絶句,声を絞って泣いた。 そして再び, 「不憫なんだ・・・」 「そうか,ちょうど人生という太平洋に乗り出すのに,粗末な小舟しか持ってなくて,それで漕ぎ出すしかない,そういう覚悟を見たんだな?」 「そうだ・・・いや,覚悟とは言えない・・・ただ,流れに身を任せる・・覚悟かな・・やっぱり・・」 「そうか,やっと子離れだな・・・人生を生きるのに,ただ流れに身を任せて生きる覚悟か。ぼろ小舟で太平洋の荒波に押し出される,そういうことの意識だな・・・」 「ホンットに気負いも何もちっともない眼なんだ・・・・(絶句)」 その時,パピヨンには「スタンドバイミー」をシャウトする自分の声が聞こえた。 ダーリン!ダーリン!スタン バイ ミー! 息子よ,いつまでも望むだけ傍にいてやりたい。だが,俺は先に逝かねばならぬ。だから,お前は自分で自立しなくてはならない。 パピヨンもそのシャウトが震えた。 パピヨンは気がついた。これはかの息子だけではないのじゃあないか?多くの若者が似たようなマインドを持っているのではないか? これは競争とは無縁のマインドだ。希望のある処に競争はある。希望のない所では希望のある処へ行こうとする競争が生じる。その競争をはなから降りているのではないか。 これは競争原理で社会の何かを動かす原動力にしようとする戦略が成り立たないことを意味する。 「このままでは負けてしまう,それがいやだったら頑張らんばやろ」という思想に基づいたエンジンが動かせない世の中になったのではないだろうか。 ひょっとしたら,我が国は競争原理ではなく,友愛・ボランティアの原理で動かねばならないのだろうか。 これまでの日本人が,頑張る原動力としてきた水戸黄門, ♪ じぃーんせえ ら く ありゃ くぅーもあぁるさァ ♪ くじけりゃ だれかが さァきにゆくぅ あぁとかぁら きィたぁのぉにィ おぉいこされぇー 泣くのがいやなら さァあ あーるーけぇーー この歌さえ辛すぎる時代になるのであろうか?だが,何のために頑張るのであろうか?
by papillon9999
| 2010-11-24 00:04
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Comments(7)
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何とも羨ましい話です…
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コメント,ありがと。Dさんのことだからイミシンやけど,いろんな意味でその通りでっしょ。
過保護も過保護,という気がするが,いずれ大嵐に遭遇することは確実やけん・・・ 本人たちもわかっていて,決して「どうにかなるさ」という気でいるわけじゃない。 この話の主人公である「彼の息子」は,バイトはちゃんとやってるらしかです。 ![]()
なんでも今日は三島由紀夫のあの決行日だとか。
結局,三島とは生きることの無意味さに耐えきれなかった弱い人,ちゅう気がするね,パピヨンは。 ♪ 生きてることはただそれだけで 悲しいものと知りましたぁ ♪ これから逃げたかったんよ,きっと三島は。かの息子は逃げてない,降りてるだけ。 なあんて言っても意味ないか・・・・ 三島ファンのお方,ごめんネ・・・
願わくば,かの息子が自分への大きな愛に気がついて,今度は自分が与える番だ,と思えるようにならむことを・・・祈らむ・・・・
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負ける、と、競争を降りるは、実際は同じではありませんが、三十六計逃げるに如かずとか負けるが勝ちとか昔から言われているように、戦いを回避したり負けても良いとする行き方もある。
でも、現代の競争社会の倫理では、負けたものに憐れみは要らない、お前が戦って防がなければ俺がお前のものを奪い取るのは正当、などの考えがまかり通っているので、争うことを好まない人間も無理やり競争に参加させ、そして負かして侵して奪い取る、それを自由競争の結果なんだから構わないとみなす、ぜんぜん自由ではない強いられた自由競争、勝者を正当化するために必要とされる敗者を生むためのはじめから勝負がついている欺瞞的な自由競争に万人が駆り立てられ、争う必要がないはずの争いをし、そして不幸になっていきます。
pulin選手,値千金のホームランありがとう!
>ぜんぜん自由ではない強いられた自由競争 初めからハンデのついた椅子取りゲームに無理やり組み込まれてしまうシステムですもんネ。 富の寡占化=新貴族の誕生です。支配層と被支配層に分化した原始時代に逆戻り。 |