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JALの「沈まぬ太陽」的体質(続編)
2006年 03月 18日
お好み焼きの女将さんから借りて読破中の,山崎豊子作,「沈まぬ太陽」全五巻,ようやく第四巻に入った.山崎豊子の作品はこれが初めてなので,これだけで判断するのは非常におこがましいが,ほんとにこの作家は,「男の美学」,「真のサムライ」といった,すでに日本人から失われてしまった価値観を格調高く描こうとしているようにみえる.それは同時に,その反対の「醜悪な男」,「にせのサムライ」を描くことにもつながる.筋を通す男のかっこよさの話で,女将さんとも話が盛り上がる.
山崎豊子の視線は,決して天下を取りに行くような英雄的な男たちへのものではなく,ごく日常の「行動基準」における「節」,「筋」を大切にする男たちへの共感なのだ.そういう市井のレベルにおける「真のサムライ」たちも,やはり運命や悪意やに翻弄される.それでもその男たちは節を曲げず筋を貫き通す.山崎豊子は他の作品でもこのような世界を描いているのだろうか. 第三巻ではあの御巣鷹山に墜落した日航機事故を生々しく再現してあった.経営トップたちは,権力争いにしか生きる意味を見出せない者たちであり,事故が起きると最大の関心事は自己保身でしかなく,無責任さをさらけ出す.これと対照的に,遺族お世話係や遺族補償交渉係,事故調査委員など責任を全うする男達もいる.また,ばらばらになった遺体のカケラの中から,いとしい身内を見つけ出そうとする遺族たちの執念がきめ細かく描かれる.例えば,一つの手が自分の子供の手だと見極める母の執念のすさまじさ.遺族との補償金交渉では,お金の価値が試される.ある遺族にとっては補償金など何の意味もない.補償金交渉を拒否してお遍路さんとして旅立っていくのだ. 事故原因究明に関するボーイング社とのからみもなかなか面白い.だけど肝心の事故原因は,実際にはどういうことで決着がついたのだろうか. それにしても,あの墜落事故がこのような悲惨なものだとは思ってもみなかった.いや520人も亡くなって悲惨でないはずがないが,そういう意味ではない.首なし遺体,胴部裂断,細切れになった遺体,など具体的に想いを馳せてみたこともなかったので,具体的に書かれたのを見て初めて,「ああ,なるほど,そんなになるんだなぁ」と衝撃を受けた.遺体のごく一部しかわからず,火葬して「灰がタバコの灰ぐらいにしかならなかった」という個所は,どんなに想像しても思い浮かばないことだろう.昨年の,事故の二十年忌,に対しても他人事として関心がほとんどなかった不明を恥じる. 第四巻の初めで,JALの首脳陣が更迭され,新人事が断行される.時の総理(中曽根康弘がモデルか?)直々の指揮である.JAL建て直しのための切り札として,会長職が経営トップとして新設される.この人材として関西の老舗紡績業の会長に白羽の矢が立てられる.このモデルはどこだろう.東洋紡ではないかとみたがどうだろうか. 国見というこの会長は「真のサムライ」の系譜の人で,これから新しいJALを作るために奔走することになるようだ.主人公「恩地」はその改革推進の右腕として抜擢される.と第四巻の帯に書いてあるが,まだそこまで読んでいない.帯によれば,その後,いろんな政治家たちの勢力争いが始まり,それに翻弄されることになりそうだ. 第五巻まで,国見-恩地のJAL改革がどのように進んでいくのか,ものすごく楽しみである.だが,結果から見ると,この改革はそれほどうまくいかないはずだ.なぜなら,もしうまく行っておれば,昨今のJALの不祥事は起こらないはずだろうと思うからだ.恐らく政治家たち,JAL内部の「にせのサムライ」達によって徹底的に邪魔され,改革は恐らく成功しないことだろう.結末はどうなるか,ほんとに興味が尽きない.女将さんには結末を決して言わないよう,きつくお願いしてある. 本との巡り逢いも運命的なものがある.こんなに駄本が氾濫する時代にあって,価値ある本と巡り逢うのは非常に幸運である.人と人の出会い,男と女の出会いも同じだろう.この本を読む巡り合わせ,つまり女将さんに昨日行った時に感謝した. それにしてもようやく第四巻である.進度が遅いようだが仕方がないのだ.仕事の雑用に追われ,ブログもあるし,「世に倦む日日」と「きっこの日記」にも目を通さなくてはならない.この本を読むのはようやく毎日の寝床の中なのだ.これを読みながら眠る.寝床に入る時が,心が一番ワクワクする時だ.
by papillon9999
| 2006-03-18 22:46
| 済み
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Comments(1)
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