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アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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腹がよじれたミステリー(第三部)
 その部屋で妻は亡くなった夫と対面した。いや,正確に言えば,”対眼した”というべきかもしれない。そこに”居た”のは1個の”眼玉”だったのだ。”それ”はぽつんと皿の上に載って”居た”。それが皿ではなく茶碗に”居れば”まさしく鬼太郎のお父さん,目玉オヤジそのものなのであるが,皿だから入浴はできない。その他大きな違いとして夥しい配線を引きずっていたことがあった。



 「ご主人です。」

 「・・・・・・」

言葉も出ない妻に,天才脳外科医は続けた。

 「ご主人が亡くなる直前にうまく脳を取り出すことに成功しました。他の知覚器官ともつなごうと最善を尽くしました。しかし,眼球1個とつなぐのが精一杯でした。耳も不成功で,知覚器官はこの眼玉1個の視覚だけになってしまったのです。」
 「何しろ,直ちに血液ポンプとつなぐなど,多くのやることがあって,どうにも仕方がなかったのです。」
 「従って,”彼”には我々の話は全く聞こえていませんし,まだ我々も彼からは見えていません。眼も視野が極端に狭まっているので,真上から覗き込まなければ彼からは認知できないからです。」

 「すると・・・今,主人は天井を見つめているだけなんですか?」

 「そうです。眼球を動かそうにも筋肉はないし,瞼もないのです。」

 「・・・・」

少し落ち着いたところで妻は改めて部屋を見廻した。眼玉を載せた皿が置いてある机の横には大事そうな箱があって,そこから夥しい配線が這い出しており,眼玉のほうへ伸びている。
 もう一方の側にはオシロスコープのような計測器があって,その画面には心電計のような波形が画面を流れていた。今はピコンピコンと信号波形が流れていたが,それは非常に退屈そうな流れ方であった。

 「あの箱の中にご主人の素晴らしい脳が大事に保管されているのですよ。培養液に漬け込まれていますのでご安心ください。」
 「それからあの波形装置は脳から出る信号を取り出しているのです。あれで反応がわかるのですよ。今は退屈そうな信号ですが,見ていてください。」

 そう言うと,外科医は眼玉の所へ行って,その眼玉を真上から覗き込んだ。

 「やあ,元気かね?今日は大変良い知らせがある。実は奥さんがやっと来られたのだよ。尤も,君には何も聞こえないんだが。」

 その時に,信号波形は待ち兼ねたようににピコピコ揺れた。それは踊っているように見えた。同時に軽快な信号音が発生した。それはとても嬉しそうに聞こえた。

 「さあ,奥さん,あなたも早く”逢って”やってください。」

 妻は気味悪そうに,恐る恐る,眉間の皺で顔全体を縮込ませながら,”夫”のそばに近づいていった。真上から覗き込んだ時,妻の顔には複雑なものが浮かんでいた。それは気味悪さと憐れみと懐かしさと,・・・いやいやそういう個別の感情に分けることはできない,いろんな感情が交じり合っていた。

 妻が覗き込んだその時,信号波形は一段と跳ね上がり,踊り狂った。そして,信号音も女学生同士が久しぶりに会ったときのようにキャッキャッとやかましく,しかし嬉しくてどうしようもないという感じで部屋中を跳びまわっていた。

 妻は我が”夫”を複雑な表情でジイーット見つめていたが,ようやく表情が落ち着いてきた。そして,ついにその口元が緩み,眉間の皺も取れた。その新たな表情は,”いとおしい”というような感情を浮かべているかのように見えた。

 妻はようやく夫の”上”から離れ,脳外科医に懇願した。

 「お願いです,先生。主人を家へつれて帰りたいのです。ぜひ,ぜひ・・・」

その眼はキラキラ輝いていた。

時間の都合上,以上を第三部とする。次回は夫も自宅へ戻り,いよいよ完結篇となります。
by papillon9999 | 2010-02-06 17:24 | Comments(5)
Commented by 灰汁狸菟簀 at 2010-02-07 19:28 x
papillon9999様

「ドノヴァンの脳髄」か「ドウエル教授の首」のような
SFホラーを期待していたのですが…オチが読めません(泣
Commented at 2010-02-07 20:08
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by papillon9999 at 2010-02-07 23:54
あーん,またまたプレッシャー!
そんなんじゃないけど,なあーんだって言われたらどうしよう・・・
(^o^)/^^^^^^^^^^
Commented by たんぽぽ at 2010-02-08 23:10 x
家に連れて帰るのはさもありなんだけど、
それでどうなるのかは、わたしもわからないです。
Commented at 2010-02-09 10:04
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。