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アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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『公的行為』とは何か(2)
 憲法第7条にわざわざ列記してある,天皇の『国事に関する行為』。そして,第4条に明記してあることは,これら以外に『国事に関する行為』は存在しないこと,および,天皇は『国事に関する行為』のみを行う,ということである。
 これを文字通り取れば,天皇はオバマ大統領と接見できないことになる。あるいは,憲法第3条にある,『国事に関するすべての行為には,内閣の助言と承認を必要とし・・』とあることを根拠に,



内閣の関与なしに,天皇は勝手にオバマ大統領と接見できるという主張も成り立つかもしれない。なぜなら,これは『国事に関する行為』に含まれないからである。
 しかしながら,これでも第4条に違反する。『天皇は国事に関する行為のみを行う』の”のみ”に抵触するからである。
 現憲法はどうしてこのような”ジレンマ”を抱える条文になっているのだろうか?実際には『公的行為』なる概念を発明して,このジレンマを無視しているわけであるが,それでは『公的行為』というものは一体どう考えたらよいのだろうか?本記事では前記事に引き続き,このような謎を現憲法制定時の事情から考察する。

 しっくいさんは日本国憲法の誕生という資料を探してくださって,その中にとても興味深いことを発見された。(憲法学者には周知のことかもしれないが,一般国民で知っている人は少ないだろう,という意味で”発見”とした。)
 なんと,現・日本国憲法とGHQ草案版とで,条文に用いられている文言,用語が微妙に違っているのである。そのことは何を意味するのかを考えれば,冒頭の謎が少しでも解けるのではないか?ということで,しっくいさんがコメントに書かれたことを基に,改めて調べてみよう。

 GHQ草案とその仮訳,および現憲法を並べて比較すると以下のようになる(赤字,下線等はすべてパピヨン)。草案の第3条は現憲法では3条と4条に分かれている。そのため,対応する条番号が一つずつずれる。

=====現憲法第3条,4条関連=======
Article III. The advice and consent of the Cabinet shall be required for all acts of the Emperor in matters of state, and the Cabinet shall be responsible therefore.
The Emperor shall perform only such state functions as are provided for in this Constitution. He shall have no governmental powers, nor shall he assume nor be granted such powers.
The Emperor may delegate his functions in such manner as may be provided by law.

第三条 国事ニ関スル皇帝ノ一切ノ行為ニハ内閣ノ輔弼及協賛ヲ要ス而シテ内閣ハ之カ責任ヲ負フヘシ
皇帝ハ此ノ憲法ノ規定スル国家ノ機能ヲノミ行フヘシ彼ハ政治上ノ権限ヲ有セス又ヲ把握シ又ハ賦与セラルルコト無カルヘシ
皇帝ハ其ノ機能ヲ法律ノ定ムル所ニ従ヒ委任スルコトヲ得

第三条【天皇の国事行為と内閣の責任】
 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条【天皇の権能の限界、天皇の国事行為の委任】
1 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
======================
=====現憲法第5条関連=======
Article IV. When a regency is instituted in conformity with the provisions of such Imperial House Law as the Diet may enact, the duties of the Emperor shall be performed by the Regent in the name of the Emperor; and the limitations on the functions of the Emperor contained herein shall apply with equal force to the Regent.

第四条 国会ノ制定スル皇室典範ノ規定ニ従ヒ摂政ヲ置クトキハ皇帝ノ責務ハ摂政之ヲ皇帝ノ名ニ於テ行フヘシ而シテ此ノ憲法ニ定ムル所ノ皇帝ノ機能ニ対スル制限ハ摂政ニ対シ等シク適用セラルヘシ

第五条【摂政】
 皇室典範の定めるところにより、摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する
======================
=====現憲法第6条関連=======
Article V. The Emperor appoints as Prime Minister the person designated by the Diet.

第五条 皇帝ハ国会ノ指名スル者ヲ総理大臣ニ任命ス

第六条【天皇の任命権】
1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
======================
=====現憲法第7条関連=======
Article VI. Acting only on the advice and with the consent of the Cabinet, the Emperor, on behalf of the people, shall perform the following state functions:
Affix his official seal to and proclaim all laws enacted by the Diet, all Cabinet orders, all amendments to this Constitution, and all treaties and international conventions;
Convoke sessions of the Diet;(以下略)

第六条 皇帝ハ内閣ノ輔弼及協賛ニ依リテノミ行動シ人民ニ代リテ国家ノ左ノ機能ヲ行フヘシ即国会ノ制定スル一切ノ法律、一切ノ内閣命令、此ノ憲法ノ一切ノ改正並ニ一切ノ条約及国際規約ニ皇璽を欽シテ之ヲ公布ス(以下略)

第七条【天皇の国事行為】
 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
   (以下略)
======================
 以上の赤字部分をまとめると文末のような表ができる。文脈の中でそれぞれ確認していただきたい。

 これからすぐわかることは現憲法における『国事行為』という文言の原語は,GHQ草案では一種類の英語ではないということだ。
 現憲法第三条にある『国事(に関する)行為』という訳語の原語は,GHQ草案第三条にある,『acts in matters of state』である。
 ところが,現憲法第四条と第七条にある『国事(に関する)行為』の原語は『state functions』』なのである。草案訳では『国家の機能』となっている。(すでにしっくいさんが指摘済み)。

 従って,このことから推定できることは,GHQ草案段階では天皇の行為を二つに分けて考えていたのであろうということだ。この二つとは,

 1.国家の機能に関するお仕事(state functions)
 2.国事に関する行為(acts in matters of state)


である。ここに重要なヒミツがあるように思われる。1は国家運営に関わる重要な機能(state functions)の”遂行”であり,2は国家運営とは直接の関係が無い,国民を代表する行為(matters of state)に相当しよう【注1】。

 『公的行為』とは実は2に相当するものではないだろうか?つまり,草案段階では『公的行為』と『国家の機能』の二つの概念を使い分けていたことになる。すると,『公的行為』という概念は最初からあったと言えそうである。
 すれば,第3条が『公的行為』を想定していて,”すべての公的行為には内閣の助言と承認を必要とし,内閣が責任を持たなければならない”ということを定めていることになる。ただし,『公的行為』とはどんなものかについては規定されておらず,従って,内閣の助言と承認,およびその責任で以って行うことが,『公的行為』となるのだろう。
 では1はどういう意味をもつのか?それは天皇を国家運営の一機関(形式的に必要な)とみなすことではないだろうか?こう考えて初めて冒頭の謎が解けるような気がするのである。すなわち,国家運営の機能を果たしてもらうためには,それを厳密に限定し【注1】,天皇の権能が大きくなりすぎないように万全の気を配ったのが,第4条と第7条の関係なのだと思われる。

 もし,(これはしっくいさんが指摘されたことだが)このような草案のまま現憲法が出来上がっていたとしたら,オバマとの接見も第3条により全く問題ないことになる。その他,共産党が常日頃非難している,天皇の国会冒頭での挨拶もしかり,天皇の海外親善訪問もしかり,全く問題なくなるのである。

 では,では,そうだとすれば,次にまた新しい謎が現れてくるではないか。一体,なぜ,草案段階での1と2の区別を,最終的に現憲法ではなくしてしまったのか?
 これに関しては長くなったので次の記事に引き継ぐことにしよう。

【注1】 これらに関する興味深い考察材料が憲法4条や7条の中にあることに気が付いたので,次の記事で述べる。

『公的行為』とは何か(2)_f0036720_2157053.jpg

by papillon9999 | 2010-01-12 18:44 | Comments(2)
Commented by しっくい at 2010-01-13 15:01
すごい!本当にすごい分析です。
私は英語に拒否反応があるので、本当に尊敬します。
原文を見れば「国事行為」がGHQ草案で使い訳られたのが確認できたのですね。何かすごい秘密を解き明かすことができたようで、嬉しくなりますね。
Commented by papillon9999 at 2010-01-13 20:23
いやあ,この分析はしっくいさんが最初に示されたものと同じですよ!

ホントに,『公的行為』なる概念は初めっからあったのですねぇ!
どうしてこの区別をなくしたか,非常に興味ある謎ですよね。
それで,その謎ももうすぐ解けそうです。やはり,しっくいさんが直感したものと同じ結論が出そうです!