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アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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陽の当たる恐怖
 この記事を書き始めた頃,ヤフー記事のヘッドラインで,軽自動車の男「次官刺した」と警視庁に 連続殺傷との関連捜査というニュースが出た.そこで予定を変更し,一晩置いて,翌朝の今再び書き始めている.まず初めに,亡くなった方々のご冥福をお祈りします.また,被害者と関係者の方々に深く同情申し上げます.



 この方々はテロに襲われるとは夢にも思っていなかっただろう.このテロ事件はターゲットが現役でない官僚であるという点で,きわめて異質である.本稿ではそれを考えてみたい.

 この事件は当初からテロであることを自ずからあらわにしている.その最大の証拠は二つの事件の被害者が元厚生省事務次官と共通しており,しかも犯行の手口が全く同じであることだ.このようなことが全く独立に別個の通常的殺人事件として偶然に起ることは確率的にまずありえない.
 しかし,特異な異質な点が一つだけあった.これまで現役,引退組を含めて,高級官僚が狙いを定めて襲われたことはないはずである(いや,私が断言できるわけではないが).この異質さは今後の新しい形態のテロの原型となる怖れがあり,霞ヶ関のみならず,各界において万全の警戒を促したい.

 この凶行は広い意味の復讐ではないか,と私は最初に思った.真犯人は年金改革によって犠牲になった人の悲惨さを身近に体験する機会があり,その復讐のために確信犯的に凶行に及んだのではないか,と見ていた.
 実際にはどうだろう?この出頭した犯人は小泉と名乗ったそうである.その時,私が思ったのは,犯人は偽名によって強烈な皮肉を演じている!ということだった.しかし,なんとそれはどうやら本名らしい.とすればこれまた別の意味で何とも皮肉である.

 今回の凶行がどういう点で異質であるか.それは2点ある.
 まず第1点は復讐の目線である.
 これまでは広い意味の復讐であれば,その刃は秋葉原事件のように不特定多数に行くか,あるいは手近の気に食わない人間に向けられるかしたのである.それが何と,現役を退いたとはいえ,厚生労働省のトップに刃が向けられた.しかも面倒な調査を行わなければ分からない個人の住所を調べてまでも.そういう面倒さを厭わずに,面倒さの無い通り魔事件も起こさずに,虎視を以ってターゲットまでたどり着くのである.
 これは社会への個人的な復讐,というより庶民に成り代わっての復讐,(と本人は思っている)というべきであり,復讐の目線,凶刃の方向性の違いが感じられる.
 
 第2点は,テロの標的の特異性である.庶民に成り代わっての復讐というと,これまでは政治家へ向けられたはずなのが,元事務次官へ向けられた,ということが新たな感覚の台頭を感じさせる.実はこの点こそ,上に書いた新たな形態のテロの恐怖なのである.【注1】
 
 なぜ今回,元トップがターゲットになったか.それは年金という国民の生活に直結する政策の直接の責任者とみなされたからであろう.しかし,従来は官僚といえば個人ではなく組織,システムであった.『官僚』,『事務次官』ではあっても,『個人名はなかった』のである【注2】.いわば日陰の存在,黒子,というのが一般国民の意識ではなかっただろうか.もっと進んだ意識では『黒幕』であるが.
 今回のテロ事件は,黒幕の覆いを取って標的に陽を当てたという感じがしてならない.これは従来と明らかに異なる意味を持っており,新たな危険への警戒を要する【注1】.

 今の時点で詳しく書くのは差し障りもあるので簡単に書くが,霞ヶ関は組織として動いているのであり,官僚個人としては今さら個人として陽の当たるところへ引き出されても困ると言うことではないだろうか.
 それはその通りであろう.年金の責任者といえども,組織の中のリーダーという意識以上のものは無かったに違いない.これで標的にされたのではたまったものではない.

 以上は以上として,それでも霞ヶ関は本来どうあるべきであろうか.そう,霞ヶ関官僚といえども本来は個人としての責任を自覚すべきなのである.組織の陰に逃げないこと.自分の子孫に対しても恥ずかしくない実績を残すべきなのだ.個人という意識があってこそ,真に国民に責任を持てる行政を行うことが出来る.

 『消費税を上げるなどといわず,霞ヶ関に築き上げた国民からの税金収奪システムを自ら壊し,個人としての各自の優秀性を組織(省庁)のためではなく真に国民のために活かして欲しい.』

 今,官僚達に捧げたい言葉である.陽が当たる場所で堂々とやって欲しい.

 霞ヶ関に関しては書きたいことがまだたくさんありましたが,最後は敢えて省略しました.そのため尻切れトンボの記述になっています.しかし,コトがコトだけに慎重を期してこれだけにします.改めて書きますが,テロはいついかなる時でも許される行為ではありません.

【注1】 個人の責任をテロによって始末をつけるものとすれば,「ある会議での賛成・反対がテロの標的となる」,という事態も起りかねない.会議での賛成・反対は,無論個人で責任を持つべきであるが,テロの被害者となることまでの責任はない.政府審議委員たちの無責任な結論も,テロの標的になっていいはずはない.
 このような危険性を防ぐために,今後,情報公開が全く為されなくなるかもしれない.すると委員会などの匿名性,日陰性は逆にますます大きくなり無責任性もますます大きくなる.そうなれば今回のテロの弊害はきわめて大きい.

【注2】 『個人』が出てくるときは,横領,汚職,などの犯罪の場合であり,薬害エイズの岡光のように不作為の罪であった.合法的な政策活動において個人名が出てくることは通常は全く無いはずである.
by papillon9999 | 2008-11-22 21:20 | Comments(1)
Commented by papillon9999 at 2008-11-28 21:36
匿名さま どうも.その後,あまり進展はないようですね.
背後に組織があって金のためにやったのかどうか.しかし,高級官僚を狙う組織があるとは未だ考えにくいですね.
どうやら,これは一種の無理心中.
道連れに,一般大衆ではなく,高級官僚を選んだ,というところでしょうか.
普段から「社会を悪くしている元凶」と思っていた(元)高級官僚ですから,どうせならそいつらを道連れにして死んでやる,ということなんでしょうね.