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アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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『危険運転致死傷罪』の微妙な論理
 時々記事に登場するK君と,彼の同志であるH君の三人で,新年会をやった.彼らは労働運動の最前線で闘っているのだが,そういうのとは無縁の私となぜか波長が合って,議論するのが楽しいひと時となる.ホントはもう一人M君がいるのだが(トヨタ社員の過労死の記事で紹介した予備校講師),センター試験直前で,過労死寸前まで酷使されていて参加不可能だった.



 さて,いろんな議論をやっていくうちに,H君がふと言い出した【注1】.

『危険運転致死傷罪は泥酔した方が罪が軽くならないの?』

その理由は,『泥酔』だと『刑事責任能力の喪失状態』となるので,刑法39条によって無罪,または減刑とならないのか,ということである.

 なるほど,そう言われてみれば何となく微妙な感じがするな,とその時思った.それでその後少し調べてみた.すると,やはり微妙な感じはやはり消えないままで,この記事を書くに至ったのである.ホントはタイトルの『微妙な論理』は『矛盾した論理』としたかったのだが,『矛盾』とまではいえないようであり,『微妙』という微妙な表現に落ち着いた次第.

 福岡で起きた痛ましい交通犯罪,幼児三人を飲酒運転により死なせたI被告の判決が今年に入って福岡地裁で下された.その判決は
 『懲役7年6月』
罪状は
『業務上過失致死傷,および道路交通法違反(ひき逃げおよび酒気帯び運転)』
であった【これも注1参照】.
 この量刑根拠(の一部)について,判決では以下のように述べている(うろ覚えなので趣旨).

『友人に水を頼んで,アルコール濃度を下げようとしたことは,判断能力が残っていた,ということであり,飲酒量はそれほど多くない』

 なるほど,と思った.裁判長は,世論や報道の『世間の空気に負けない』冷静な判断を行った,といえよう.(被告の呼気中アルコール濃度は0.25mg/lであり,酒気帯び程度.この数値が時間経過と水で薄めた効果により,どれだけ影響されたものか,証明は不可能であった).
 これで,世間の空気であった,『被告は泥酔していた』ということが否定されたのであるが,それが『危険運転致死傷罪』の適用を回避した重要な一因となったと推察できる.つまり,『泥酔』→『危険運転』という筋書きが成立しなくなったのである.

 しかし,逆に言えば,泥酔と認めたら『危険運転致死傷罪』が適用された可能性も高い,ということである.この逆筋書きに,H氏は疑問を抱いたのである.

『泥酔』ならば,『判断能力を喪失している』,ならば『責任を問えない,すなわち無罪か減刑』ではないのか

という筋書きである.
 そこで,私自身,刑事責任能力について調べてみた.(といっても,ネットで調べて出てくる程度のもので申し訳ないが) その中で,Wikipwdiaの『原因において自由な行為』という項目に記述があった.(同じウィキの『責任能力』から飛ぶことができる)

==========
概要
例えば泥酔者は心神喪失、もしくは心神耗弱(こうじゃく)の状態にある。心神喪失者や心神耗弱者が不法な行為を犯した場合、刑法第39条の規定により犯罪不成立もしくは刑の減軽となる。しかし、車を運転することを予定しながら飲酒により泥酔し、そのまま自動車を運転して事故を起こした場合、業務上過失致死傷罪ないし危険運転致死傷罪が成立し、心神喪失(心神耗弱)状態であったにも拘らず完全な責任が問われる。また、「泥酔した状態で人を殺そう」という計画を立て、凶器を用意して酒を飲み、計画どおり泥酔状態で殺害に及んだ場合も殺人罪が成立し、刑法39条の適用はない。これが判例・通説の結論である。

==========

ウィキの記事にはまだ続きがあり,実際に罰則を適用する際の解釈が分かれたりしている.つまり,一種の自己矛盾を孕んでいる可能性も大きいように思えるのである.
 例えば,上の概要でも,

『車を運転することを予定しながら飲酒により泥酔し』
『泥酔した状態で人を殺そう」という計画を立て、凶器を用意して酒を飲み・・・』

などとある.ならば,それらをどうやって証明するのか,ということである.つまり,次のような問題点が存在するのである.

(1) 犯行の意思を持って泥酔したことをどうやって証明するか
(2) 逆に怖いのが,犯行の意思を持ってないにも拘らず泥酔して運転や暴力を起こしたケースである.
  この心配は杞憂ではないと思う.飲酒により人格が変わる(ように見える)・酒癖が悪い,ということは一般によく見られる.もしホントに犯行の意図はなくても,泥酔してその辺の石を持って人に殴りかかったりすることはないだろうか.私は心配だ!(^o^)/(実は,いつも酔っ払った勢いで車を運転しやしないか,ずっと心配して生きてきた.実際,自転車は運転して崖から落ちたこともある(ずっと昔(^o^)/).)
(3) 逆に,完全犯罪の可能性もある.そのストーリーは・・・
 あいつを殺したい,と深く深く思って泥酔する.しかし,凶器などは準備しない.犯行は偶然に任せるのである.つまり,泥酔状態で偶然ナイフや石を持つ確率に賭けるのである.当然,100%成功するわけではない.ある確率で成功するかもしれない,それに賭けるのである.
 その確率を少しでも上げるために,自己催眠やら憎悪の気分を掻き立てて泥酔に至るのである.あとは神頼み?? その証拠は本人の心の中にしかなく,絶対に犯行意思を立証できない・・
 (おおーっと,重要な推理小説のネタをばらしてしまった.このネタは著作権を強く主張します.使うことを禁止します.私がそのうち使うのでお楽しみに!)

 『危険運転致死傷罪』は決して抜けない名刀ではない【注2】.適用された例も100件は越していると思う.しかし,こと飲酒運転に関しては,以上のような微妙な論理が存在するので,なかなか適用するのが困難なのではないだろうか.つまり,論理を突き詰めれば(飲酒前に運転の意図があったことを立証できなければ),

 『泥酔状態の運転は無罪,酒気帯び運転は厳罰』

となってしまうのである.これはさすがに矛盾を感じるので適用がなかなかなされないような気がするのである.このあたりの調整には世論の合意と法論理の発展が必要と思っている.

【注1】  この話題は,『きっこのブログはひどいねえ.』から始まった.福岡地裁の判決に対して,きっこさんが『死刑だ!死刑だ!』と叫んだ記事があったからである.私は,俗情に基礎を置いた議論を展開するきっこさん『らしい記事』だと思っていた.
【注2】  構成要件はウィキで『危険運転致死傷罪』を見れば出ている.飲酒でなくても,例えば暴走行為は判断能力を有しているので構成要件を満たす.
【注番外】  「心神耗弱」を十年ほど前まで,私は「しんしんもうじゃく」と読んでいた.だって,磨耗の耗でしょ?(^o^)/
by papillon9999 | 2008-01-20 00:59 | Comments(0)