アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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波濤険しき朝鮮海峡を渡る(1)
 1.半島への想い
 1985年、私は初めて日本の外へ出る機会を得た。しかも2度もあった。一度目は中国で二度目は韓国だ。中国はそれからあまり縁がなく、数回訪問したに止まるが、韓国とは深い縁が続き、行った回数はその時から三十を超えている。これはテグ(大邱)に今なお住んでおられる崔先生のおかげである。崔先生のことは以前の記事にも書いたが、いよいよ韓国シリーズを始める。



(ただし、私自分のことを伏せたまま書いていくのは困難で、ぎこちない書き方になるかもしれない。そしてメモも残してないので記憶に頼って書かざるを得ない。多分、ずいぶん不正確なものが混じると思う。)
 大げさに言えば、崔先生から私の人生観(処世観のようなもの)が確実に影響を受けたのである。崔先生との交誼がなければ、私は今の組織でまた違った生き方をしていたかもしれない。幸だったか不幸だったか、どちらかわからない。が、どちらであっても構わないし、もう遅い。

 初めての韓国への期待は最初はそれほどでもなかった。崔先生から二年越しに何度もお誘いを受けて、ようやく決断したのだった。他の遠い町にいるT君も同時に誘いを受けていて、相談の結果、ようやく「行ってみるか」と決断したのである。日程は10月の終わりから11月の初めにかけての約1週間だったと思う。決断のあとは徐々に韓国への気分も昂揚していった。
 交通手段として、T君は飛行機にしたのだが、私は下関からの関釜フェリー(注1)で行くことに決めた。ガイドブックの「地球の歩き方」に、関釜フェリーのことがとても魅力的に書いてあったからだ。私は未だ見ぬ隣国へ旅心をそそられた。ちょうど学生時代に北海道へ貧乏旅行に出た、その時のような昂りを感じてきた。邪馬台国の時代からどれだけ多くの人が行き来したことだろう、それは船だった、自分もそれを体験したい、崔先生とT君にはそう言った。
 その年の4月からNHKの朝のラジオでハングル講座の勉強も始めていた。ただし、テキストは5月号まで買ったのだが、その後の号は買っていない。つまり、「最初だけ」だったのだ。でもたったそれだけであっても、ハングルは読めるようになったし、4月号に書いてあった挨拶文や単語はかなりいつまでも鮮明に憶えていることができた。(注2)

 2.朝鮮海峡の冒険
 いよいよ下関からフェリーに乗りこむことにしよう。船はかなり大きなものである。数千トン?はあるのかな。ひょっとしたら全然数字を間違ったりして。でもそのくらいはあったのは間違いない。船室は二等、特二等、一等、特等、とあったと思う。この中でどれがコストパフォーマンスがいいとお思いだろうか。値段はうろ覚えだが、二等は6千円、特二は8千円、ではなかっただろうか。ここに、二等は大勢の雑魚寝部屋、特二は八名定員の部屋である。私は特二を取った。これは後になってわかったが見事に正解だった。実は、その日、私の取った特二の部屋は他に誰もいなかったのである。
 出国手続きの時から私は圧倒されていた。たくさんのハルモニたちがたくっさんの荷物を抱えて元気よくひしめいていた。よくしゃべり、よく笑い、よく食べていた。出航は午後5時だと思う。まだ明るい中を、北九州の沖を通っていくのが見えた。
 私は船中の免税店でビールを買い込み、個室となった特二の8人部屋で、つまみを広げてグイグイやった。実に気持ちよかった。欲を言えば、ハルモニと愉快なおしゃべりができたらもっとよかったのだが、何しろ伸び伸び感が何物にも替えがたくありがたかった。その頃は、ビールをしこたま戴いてもちっとも腹が膨れなかった。砂に水が染み込むように腹の中に入って行ったのである。(今はビールをたくさん飲めない。腹が膨れて・・グスン・・)
 いつの間にか夜も更けていた。そして更けるにつれて体が揺れだしてきたのである。えー?ビールで酔ってきたかなー?と思いながら飲んでいた。そのうち、体が揺れるだけでなく、ビール缶が転がったり、つまみや荷物がずれ動いたりしだした。これは眼の錯覚ではない。そうか、船が揺れているのか!うひゃー早く寝ないと船酔いするぞ、とその頃になってようやく気づいたのである。
 トイレに行こうとするともうすでに、まっすぐ歩けないようになっていた。何かにつかまっていないとおしっこもできない。トイレの横に風呂があった。後で入ろうと思っていたのだが、その風呂を覘いて驚いた。なんと、風呂の湯船の水がバシャーン、バシャーンと右に左に大きく揺れて踊っているではないか。湯船の水はほとんど外に飛び出して残りわずかになっていた。それを見て急に気分が悪くなった。そう、この頃は船はまるで木の葉のように揺れていたのである。ひゃーこれはたまらん、と部屋に戻ってあわてて横になった。
 横になってわかったが、そのままじっと横になっているのにはかなり抵抗力が必要だった。ぐーっと船がどっちかに傾くと横になった体も転がりそうになるのである。それを両手を広げて床を押さえつけ、必死で抵抗した。ビールはとっくにあきらめ、ようやく灯りを消して眠った・・・
 ・・・・・ところがである。多分眠ったのであるが、必死で抵抗しながらどうやって眠れたのだろう。気がついたときには、私の体は特二の部屋の中を、右に左に、ゴロゴロと転がっていた。今度は抵抗を試みたが全く無駄であった。特二の部屋は8人部屋で縦横数mはあると思う。壁に行き着くまでは回転を止めることはできないのだ。私は無駄な抵抗をやめて、右に左に、心行くまで転がっていた。よく胃の中のものを吐き出さなくて済んだものだと思う。ビールが入っていたのがよかったのだろうか?

 たぶん、そのうちまた眠りに入ったはずだ。目が覚めたときには港の外に停泊していた。すでに波は静かであった。一晩の無事を喜んだが、大部屋の二等部屋だったらどうなっていたのだろう?みんなたくましいな。
 ところで、もう明るくなっているのに、船はいつまでもじっとして動かないのだ。何やってんだろう、と思いながら船の中を散歩した。昨夜の嵐の痕跡はよくわからなかった。
 この初航海では知らなかったのだが、この関釜フェリーは実は釜山港沖には早朝5時ごろにはすでに着いているのである。しかし、朝の九時にならないと釜山港の税関職員や入国管理事務官が仕事を始めないので、それまで釜山港港外で時間待ちをしているのだった。
 ようやく船が最後の一歩を動き始めた。いよいよ初めて半島に降り立つ時が来たのだ、という気が充満して、心地よい緊張感に包まれていた。

【注1】 今、「間釜フェリー」と変換しようとして、「関釜」がすでに変換表にないことを知った。昔は確かに「かんぷふぇりー」で一発変換できたのに・・・・ここも時代の変化か・・・・

【注2】 このあと数年間、毎年4月から心機一転の再勉強を試みる年が続いた。しかし、毎年4月号しか買うことはなかった。4月号だけは何年間かの分が手元に残ることになった。確か、10月にも新規開講が始まったと思うが、どういうわけか4月にならないとその気分になれなかった。テキストは前年と同じ、という年もあったと思う。
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by papillon9999 | 2006-07-09 01:15 | Trackback(9) | Comments(6)
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Commented by @boh at 2006-07-09 12:29 x
 はじめまして。今日和。
 今日、"Under the sun"に参加表明させていただいたばかりの@boh(Kyuichiro Akimoto)といいます。
 作家志望の中学生です。
 小泉総理の小恥ずかしい英語を全世界に披露した訪米や、軍事危機を煽るテポドン発射まで、この一週間激動の世界情勢でしたが、あなた方のしている活動がすこしでも世界にとって、そしてこの日本にとって光明となる事を祈っています。
 私は小説で、統一教会の霊感商法・政治癒着問題、731部隊問題、薬害問題、などについて扱っています。
 何かご存知のことありましたら、また現在書いている小説に間違いなどありましたら、私のサイトにコメントしていただけるとうれしいです。
 同志的連帯の挨拶を送ります。

 ---
 「正しい人のままで死なせてください」 
 http://d.hatena.ne.jp/beanguy/
Commented by papillon9999 at 2006-07-09 14:08
@bohさま  コメント,ご挨拶,どうもありがとうございます.UTSへは私が一日だけ先輩だというわけですね.どうぞよろしくお願いします.
中学三年生だとか.私のその時代を考えると月とスッポンです.陳腐な譬えで恥ずかしいので,プレスリーの歌と小泉の歌,としましょうか.
小説で「統一教会の霊感商法・政治癒着問題、731部隊問題、薬害問題、などについて扱って」おられるとか.さっき拝見しましたがずいぶん長いのですね.
時間がかかってもよろしいでしょうか.ぜひ拝読させていただきます.
Commented by no_tenki at 2006-07-09 19:54
はじめまして~ハムニダさんちのコメントから、迷い込んで来ました。
1985年!私の生まれた年です。(笑)これからの話に期待です!
そうですね。大昔の人も船で行き来していたんですよね…そうだったよ。
人から人へ受け継がれる物、昔の人と同じ事を感じてみる事、何気に大事だと思います。
Commented by papillon9999 at 2006-07-09 21:56
no_tenkiさん  いらっしゃいませ。はじめまして。そうですすか。期待されるからにはがんばらなくっちゃ。85年生まれということは成人になったばかりですね。羨ましい・・・
ところで、no_tenkiさんのブログを拝見しました。いろんな意見が飛び交っていますね。
昔は奈良とか飛鳥とか京都とかの中央政府が、「ここまではわが国じゃ」と威張っていても、対馬や北部九州や半島南海岸や済州島や、広ーい地域で勝手に行き来していたはずですね。
「俺たちはあいつらより優れている」なんてどうして言えるのでしょう。
Commented by KUMA0504 at 2006-07-10 00:28 x
85年というと、ずいぶん早い渡韓ですね。完全民主化の直前でしょうか。楽しみに読ませていただきます。
私も過去ハングルが片言だけしか出来ないまま、6回行きましたが、(モーテル宿泊でも行って帰るだけなら何とかなるものです)やはりきちんと会話が出来なくてはいけないと思い、本格的に勉強を始めたら、進歩が全然無くて、韓国へはなかなかいけないままです。あまりゆっくりするのは止めて、とりあえず行ってみようかな、と最近思っています。
Commented by papillon9999 at 2006-07-10 22:32
KUMA0504さん  コメントありがとうございます.85年はまだビザがうるさくて,そしてあちこちに検問所があって,銃を持った軍隊が警備していましたよ.普通はフリーパスですが,通り道は狭められていて,形式的に兵士が車の中を覗き込んでいました.
片言だけしか出来ないまま行くのも,面白いですよね.困った人を助けることは惜しむことなくやってくれますから.