随想や意見,俳句(もどき)
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慎太郎さんの『あさましい世の中』
2006年 05月 22日
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『なんともこれは,あさましい世の中である.一群の特定の若い男たちと若い女たちとが,まるで盛りのついた牡犬および牝犬の群れのように,行き当たりばったりつるんでふざける,という類の小説を,ある男が書く.すると老若大ぜいが,「新しいモラル」だの「新人の季節」だのと誉めそやして騒ぎまわる.この畜生同然の交接風景を手放し肯定で描いたご本人が,また,「大人への不信」云々などと甘ったれ切ったことを,恥ずかしがりもせずにがなりたてる. ・・・・中略・・・・右畜生小説の作者は,当年満23歳の既婚者である.その大の男がおのれを「非大人」に見立てつつ,「大人への不信」などという言葉を吐き出すていたらくは,不潔も極まって,さもしいというもおろかな気が,私にする.」 ================ 以上の文は誰のことを書いたものか,お判りだろうか.これはあの石原慎太郎さんのことだ.書いた人は,大西巨人.初出は,『三田文学・1956年8月号』であるらしいが,私が読んだのは,巨人の随筆・評論集の一つ,『遼東の豕(いのこ)』(1986年)の中に引用してあった文だ.この中には,さらに,『「太陽の季節」において,男根による障子破りという陳腐な光景がさも新風かのごとく描くような・・・先物買い的・バス便乗的「オピニオン・リーダー」人種は,いつの世にもいるのである.』とも書かれている.そして,そんなことは江戸時代にはいっぱい歌に描かれているよ,とも.「陳腐な光景」と書く所以だ. 大西巨人は私の心から信頼する一人であるが,独特の文体による小説と評論が共に素晴らしい.特に,優生思想信奉家・渡部昇一を完膚なきまでに叩きのめした評論は胸がすく思いをした.(申し訳ないことに,巨人の最高傑作,「神聖喜劇」だけは,長すぎて未だに読了できないでいる.やり残し課題の一つだ.) ところで,今回の記事は,華氏451度さんの所で,石原慎太郎が三選出馬を表明したことに対する「嘆き」が綴られていたことに由来する.それと,布引さんのコメントに対する回答で,私が,『石原慎太郎の単細胞をいずれきちんと総括しなければなりません.文学者と言う評価を地に落としてやりたいです.でも一冊も読んでいないのでこれから読まねばなりません.つらいです.』と書いていたことにも因る. 実は作家・石原慎太郎に関する私の持っている情報はこれだけである.これでは「石原慎太郎の単細胞をきちんと総括」できるはずがない.でも,私自身で彼の評価を見定めるために,彼の小説を読むことはつらい.つらすぎる.やっぱりやめようかな. それでは都知事・石原慎太郎を考えてみよう.私は美濃部知事との都知事選一騎打ちが,今でも記憶に新しい.あの頃は公明党も素晴らしかった.今の人は信じないだろうが.竹入委員長と矢野書記長のコンビで,社会・公明・共産の三党が連合し,全盛期の石原さんに勝ったのだ.社公共の懐かしく素晴らしき共闘時代だった.余談だが,美濃部さんはどうも公明党を一番信頼していた節がある. さて,石原さんは鈴木俊一さんの後を継いで知事になった.鈴木都政は自分が官僚だったから官僚政治になるのは当然として,石原都政もそれに劣らぬ官僚政治である.この理由は,石原さんが細かい政策には関心がなく,かつその能力もないため,官僚に丸投げするからであろうと思う.それで,本人がやれることは,ただ精神論をぶつだけになる.特に教育の現場が悲惨な状況を窮めているのはそのためだろう. 日の丸・君が代の強制への異常な執着は何なのだろう.きっと,福祉への冷酷非情さにも通じるものがあるに違いない.私はこれは,彼自身のすさまじいエリート意識がなせるわざだと見ている.障害者や女性や”三国人”への蔑視はものすごい.渡部昇一といい勝負かも知れない.それと同じ寸法で,それに支配欲をくっつけて,他人の子供を国家の将棋の駒とみなせるのだ.障害者は将棋の駒にもなれなくて,国家の厄介者となる.だから,障害者もその存在が許せないのだ.うーん,渡部昇一と同じだ. こういう人に限って(だからこそ,というべきか?),自分では決して軍隊にも特攻にも行かないだろう.無論,自分の息子達にも行かせることはない.仮に,息子が志願したとしても,必死で止めに廻るだろう.こういうところは小泉にも似ている.(政策丸投げで官僚政治強化となった所もだけど.)とにかく,慎太郎さんは23歳の大人になっても,「大人への不信」云々などと甘ったれ切ったことを,恥ずかしがりもせずにがなりたてていた人だったのだ. まあ,きりがないのでこれくらいにしておこう.もっと素晴らしい批判があちこちでなされているだろうからだ.ところで,面白いことに気がついた.実は前々から何となく感じていたことだが,一種の世代論かもしれないが,表現・文のことだ.華氏さんの記事文には,『嫌いだ』とははっきりと書かれていない.『苦手』という苦心の表現をなさっている.これは第一にお人柄によるものだとは思うが,私はそれだけではないように感じるのだ. 文中から拝察するに,華氏さんは50歳以下ではないだろうか.私の単なる印象だが,今の45歳前後の人々はどうも言葉が優しいのだ.汚い言葉を使われない.特に対人物に関してはそうであり,直截的な物言いをもなさらないようなのだが,どんなものであろうか.たとえば,上の大西巨人の文を見ると,直截的な非難の言葉がたくさん浴びせられている.これと華氏451度さんの文章を比べてみるとその違いがよくわかると思う.逆に言えば,華氏さん辺りから見ると,ここにある巨人の文に違和感を抱かれるのであろうか(中身ではなく),という疑問も出てくるのだ.え?私?私は違和感はありません.
by papillon9999
| 2006-05-22 00:17
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Comments(14)
TBありがとうございました。大西巨人の文章、まったく違和感ありません。佐高信とかの文章も好きです。私は実生活では言葉が汚い(?)人間で、他人を罵り倒します。要するに字を書くときは猫かぶってるんですね(笑)。あるいは止め処がなくなってしまうんで、無意識のうちに手綱を引いてしまっているのかも知れません。う~ん、考えてみよう。それと、「苦手」と言う言葉を使ったのは、書いたときの感覚の問題としてこっちの方が執拗な感じがしたものですから(嫌いはひょんなことで好きに転じることがありますが、苦手は自分で意識的にやらないと得手にならない気がしたもので)。
『太陽の季節』は読みました。あれ1冊読んだだけで、げっそりして他は読む気が失せたままです。文壇、というところにも不信感持ちましたね……。
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布引洋
at 2006-05-22 11:47
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石原慎太郎を読むのはかなり忍耐が必要です。文学的に二流で三島文学を汚くして大衆受けするよう俗っぽくしたものです。どうしても読むなら三島由紀夫を推薦します。
現在のネット右翼や変態の猟奇的犯罪者の思考と共通点が幾つも見られて興味深いでしょう。 私は三島由紀夫と小泉純一郎との、ある種の共通点に注目しています。強烈な美意識、拡大された自己愛、歪んだ選民意識、不思議なほど似ています。二人の青年時代の写真が兄弟のように似ています。其のほかにも似たところが有るようです。
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papillon9999 at 2006-05-22 18:22
華氏451度さん 大変失礼しました.佐高信の文章も好きだったら問題ありませんね(笑) なんでも一緒くたに言うのはいけないのですが,何となくそういう印象を感じていたものですから.すみません.
都知事選は候補者がポイントですね.いろいろ考えて見ましょう.ところで,石原さんの前は青島さんでした.あの人がどんなにマイナスとなったか・・・なんであんな人をみんな入れたのでしょうね・・・佐高さんがどっかに書いていました.永六輔さんは青島の人間性をとっくに見破っていたんだって.
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papillon9999 at 2006-05-22 18:29
布引洋さん 慎太郎とは「三島文学を汚くして大衆受けするよう俗っぽくしたものです」とは素晴らしい表現ですね!誰かに言う時に使わせてもらいたいです.私も三島は読んでみる価値はありそうに感じています.
三島と小泉ですか.うーん,ちょっと三島がかわいそうな気がしますけどね.よくわかりませんが・・・強烈な自己愛とゆがんだ選民意識はそんな気がします.ただ小泉の美意識とはどんなのでしょうね.俗っぽい気がしてならないのですが・・・
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布引洋
at 2006-05-23 14:14
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三島、小泉、石原慎太郎、戸塚宏の共通点を書き忘れていました。
共通項は暴力です。暴力(武力)への限りない偏執的な愛着。暴力(武力)を彼等は愛しています。 『力』への彼等の愛情は原理主義者の信仰心に似ています。 三島の美意識ですが、文学よりも彼自身の肉体の美をより以上に重要視していました。素っ裸でふんどし姿になり日本刀を構える写真集を出版しました。十分に俗っぽい気がします。
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papillon9999 at 2006-05-23 22:40
『共通項は暴力です。暴力(武力)への限りない偏執的な愛着。』なるほど素晴らしい着眼点です.『原理主義者の信仰心に似ています』もなるほどその通りですね.それから三島も『十分に俗っぽい』もなるほどなるほどです!
ここのコメントだけに残すのはもったいないです.他にも使わせていただきたいです!
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布引洋
at 2006-05-24 12:53
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誉められたので調子に乗り彼等四人をダークプリンスと書こうとして、戸塚はエリートではなく3K仕事をする単なる下士官なのに気が付いた。
戸塚は単純な男です。理論ではなく経験で全てを判断しています。戸塚の自伝を読むと彼の原点は若い頃の遭難事件に有るようです。 友人と二人で嵐の中ヨットで出航して救命胴衣をしていた戸塚一人が助かった事件です。 この部分を何度も読み返して書かれていない事柄に気が付きました。年齢が書かれていません。たぶん高校生程度ではないかと推測されます。スクール生と同じ年頃です。 どちらが艇長かの記述が有りません。どちらが出航を言い出したか、救命胴衣の持ち主は誰か、何故救命胴衣を一つしか用意しなかったのか、記述が抜けています。嵐の中自分だけ生還できた事だけが書かれています。その後『力』こそが全てを決めると言う戸塚独特の考えが出来上がるのです。
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papillon9999 at 2006-05-24 21:08
そんなことがあったのですか.『想像力』を駆使すれば,嵐のヨットで何が起ったのか,興味深々ですねえ・・
真相を知ってるのは彼一人なわけですねえ・・・・ うーむ・・・非常に意味シンですよねえ・・・当時の二人の関係は果たしてどんなだったのでしょう・・・ ケーブルテレビの朝日ニュースターで,ニュースの深層というのがありますが,水曜日は宮崎哲弥なる者が司会を務めます.そこに,戸塚をゲストで呼んで精一杯の主張をさせていました.そしてそれに感心していました.あの宮崎という人物,それと朝日のテレビは相当ひどいレベルです.
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布引洋
at 2006-05-25 11:51
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新聞は読売、サンケイより朝日は少し良心的ですが、テレビは反対に朝日系が一番突出しています。『作る会』系の人が関係している可能性がありそうです。
四人は同類項ですが戸塚は小物だけに中身の判断は容易に出来ます。戸塚の中身を理解すれば、他の連中の中身も類推できます。 遭難事件の疑問で一番重要なのは誰が艇長だったのかです。何故なら船長に全ての決定権と権利、責任があるからです。いわゆる平等な民主主義のルールは此処では適用されません。メンバー個々の自主性や責任よりも船長の決定が優先されます。 児童虐待の親は子供の時やはり虐待を受けている場合が多いのです。家庭内暴力を揮う者も同じです。幼児期のトラウマが本人の性癖を決定するようです。 戸塚は其れに加え、遭難事件の決定的体験が彼の考えを決めました。『暴力が全てを解決する』と言う恐ろしい考えは、この時生まれたのでしょう。
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papillon9999 at 2006-05-30 00:45
布引さん 久しぶりに書いています.ゆっくりブログの記事を考えることができるのってほんとにいいですねぇ・・・仕事に追われると人間性が失われていくようです.戸塚の子供時代,どうだったのでしょう?テレビ朝日はS学会も関係ないでしょうか?最近特にひどいです.ケーブル系も.
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布引洋
at 2006-06-08 13:14
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①御都合主義的な白昼夢に耽る。
②自分のことにしか関心がない。 ③高慢で横柄な態度。 ④特別な人間であると思っている。 ⑤自分は特別な人間にしか理解されないと思っている。 ⑥冷淡で、他人を利用しようとする。 ⑦批判に対して過剰に反応する。 ⑧虚栄心から、嘘をつきやすい。 ⑨有名人の追っかけ。 ⑩宗教の熱烈な信者 これ等の症状は自己愛性人格障害の特徴ですが、上記の人々はかなり重症と思われます。 私達素人でも症状が判るほどの重度の精神病患者たちです。
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papillon9999 at 2006-06-10 15:03
布引洋さん 仕事に影響するので,ブログを覘くのを我慢していました.だって,いろいろ書きたくなってどうしても時間が取られるからです.まだしばらく続きますが,時々覘きます.でもコメントやTBに,全然関係のないものがたくさん溜まりますね.あれはいったい何なのでしょう.悪質ないたずらなんでしょうか.
ところで,上記の列挙事項,なかなか良くできていますね.自己愛と虚栄心とエリート意識と支配欲と狡さと卑怯さと,そしてまだまだ・・・ ①から⑧までは典型的な症状で,今挙げた虚栄心云々で大部分説明ができると思いますが,⑨と⑩は一見すると不思議です.しかし,あり得るのです. ⑨は自分に中身のないことを他人(有名人)と仲がいいことを利用して自分も高く見せる症状にすぎず,⑩は自分に判断力のないために,新興宗教の得体の知れぬ教祖様に指導してもらわなければならないからです.この10か条は改良の余地はありましょうが,かなりの出来だと思います.
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at 2009-02-07 06:47
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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papillon9999 at 2009-02-07 09:33
こんな匿名コメントが来ましたよ.
Commented by 魔王シユウ at 2009-02-07 06:47 x もう少し勉強しろこのバカ! http://satan.co.jp もう忘れかけていた古い記事を蘇らせてくれてありがとうね. なんと素晴らしい記事をパピヨンは当時から書いていたのねえ!(^o^)/ それにしてもこの方は慎太郎さんファンなんだろうか?可哀相に・・・ ところで皆さんは上のURLに飛んではいけません. |