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アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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The Enemy Within (内なる敵):1
 ようやく入手した。Jay M. Gould 著,肥田舜太郎他訳で,邦題は『低線量内部被曝の脅威』となっている。原著の初版は1996年であるが,訳本の刊行は2011年4月15日とある。福島事故のおよそ1カ月後だ。訳は非常に滑らかな自然な文章となっていて,質が高い。



 訳者あとがきから推測するに,96年当時の訳本は絶版になっていたのを,福島事故があったので,改めて再出版したのだと思う。その際,再度訳を見直したのかどうかは知らない。
 
The Enemy Within (内なる敵):1_f0036720_18584313.jpg

 本記事はシリーズ化するつもりであるが,例によってなかなか果たせないかもしれない。とりあえず,著者まえがきを読んだ感想を書いておく。

 この J. グールドは統計学の専門家であるが【注1】,初めは経済的な問題の分析を行うのが主たる業務であった。ところが,ウラン価格と石油価格との不自然な連動から,原子力産業に興味を持ち,それからさらに原発周辺の癌死亡率などの疫学統計に興味を発展させて行った人のようである。従って,統計分析に関してはプロ中のプロと言うべき実践家なのである。

 1981年に,グールドは大きな影響を受けたある本,以下に示す,と出合う。

 アーネスト・スターングラス著:「隠された放射性降下物:広島からスリーマイル島に至る低線量放射線」
  「Secret Fallout:Low Level Radiation from Hiroshima to Three Mile Island」

 
 この著者は当時,ピッツバーグ大学医学部放射線科長の職にあった,放射線物理学者である。彼はウェスティングハウス社で人工衛星で用いられる多くの画像撮影装置を発明した人物であったが,原子炉の安全性に疑問を持ち始め,同社をやめたそうである。

 グールドは同社の仕事をした際,原子力産業に対する疑問を抱き,それを解決する一助としてグールドの本を読んだのである。その仕事とは,70年代にウラン価格が6倍に高騰したことの調査である。ウェスティングハウス社はウランを電力会社に供給する立場にあり,高踏価格を転嫁できない契約だったため,莫大な損に見舞われたのである。
 グールドは需要と供給の関係から,高騰の必然性を見極めようとしたが,石油危機の代替としてのウラン需要が増加したためではなく,それはトラストの所為であったことを突き止めた。実は石油危機の際にも,ウランの需要はそれほど高まらなかったのである。(パピヨンの翻訳)。それはなぜか。その理由を本では以下のように表現している。

 ・・・1970年から1977年を調査すると,原子炉では多くの強制停止や不測の事態が起こっていることが分かり,原子力産業全体がそれらの年に予定された稼働率の半分以下しか動いていないことを発見した。・・・

 要するに,大昔から,原子炉はしょっちゅう稼働停止していたわけである。その後,環境保護庁の科学顧問として仕事をしながら,いよいよ原発と癌との疫学データの分析に興味を持っていった。

 ・・・私は州や連邦政府の疫学者たちが,・・・郡の癌死亡率が地域で大きなばらつきがみられる理由について,あまり探求したがらないことに気がついた。・・・

 御用学者の存在はいずこの国も同じということなんだろうか。グールドはこのばらつきを調べようと決心し,1984年,新たなキャリアをスタートさせた

 グールドが問題にしたバラツキと言うのは以下のようなものである。

 1.たとえば石油化学産業とその廃棄物が多く集中したニュージャージー州とルイジアナ州で癌死亡率は際立って高くなっていた。(この地域は癌回廊と呼ばれる,と訳注に書いてある。)
 2.たとえばテキサス州とルイジアナ州は,石油化学物質への曝露が国内最高レベルだが,乳癌死亡率は極めて低い。
 3.これに対し,ニューヨーク州ウェストチェスター郡やロングアイランドでは化学物質への曝露は少ないが,国内最高の乳癌死亡率を示す地域の一つである【注2】。

 これらの謎は,グールドがスターングラスに出会った時に氷解し始めた。スターングラスは,原子炉からの放射性放出物への曝露が,隠れた補助因子であると示唆した。・・・
レイチェル・カーソンが著書「沈黙の春」で初めて指摘したように,放射能は化学物質の発癌性を増幅させるのである【注3】。


 まあ,本書ではグールドがこのような初期体験の下,原子炉(必ずしも原発だけではなく,米国には核兵器研究所がある!)と癌死亡率(特に乳癌)の関係を,膨大な疫学データを基に分析して行くのである。これからその詳細を見て行こうと思う。

 関連記事:玄海町の白血病 2012年 07月 04日

【注0】 タイトルの,The Enemy Within 内部の敵,というのは2つの意味を感じる。一つはもちろん,内部被曝させる被曝源のこと,もう一つは,同じ国民・同胞に放射能という毒を撒き散らす輩,のことだ。これも自国のファシストと同じく,内部の敵。

【注1】 古代生物学者のStephen Jay. Gould (故人)とは別人である。

【注2】 ニューヨーク州はニューヨークに近いのに,多くの核関連施設がある。

【注3】 この記述は,ルイジアナ州に関する1と2の観測事実と整合しないように思われる。ルイジアナ州は乳癌死亡率は極めて低い(2)が,その他の癌死亡率が高いというのだろうか?それとも,1のルイジアナ州は他のどこかのまちがいだろうか?
by papillon9999 | 2012-11-04 20:30 | Comments(0)