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震災瓦礫広域処理問題の本質(6)
震災瓦礫広域処理問題の本質(5) 2012年 05月 18日の続編

 上掲第5報では,放射性廃棄物に関する処理方法の矛盾を指摘した。従来の処理方法を改めて【注1】に概略をまとめておく。
 ところが,原発の爆発によって市民の領域に飛び散ったものは放射性廃棄物は安全神話に矛盾するため想定されておらず,何にも法的に規制するものがなかったのである。



政府・霞が関は,それを”放射性廃棄物”とは呼ばず,”放射能に汚染された災害廃棄物”という別の概念を作り上げ,放射性廃棄物であれば必要な手順を適用しないでも済むスキームを早々と打ち立てたのである。
 しかも,この管轄は放射能に対する経験がない環境省だった。その環境省が全く専門的なオーソライズもなく(尤も,これが形式的な御用手続きに堕す可能性があるかもしれないが,曲がりなりにも資格と責任の所在の理念的問題である),つまり勝手に放射能がれき処理の安全基準を作るのはもってのほかである,というのが前報までの趣旨であった。
 放射能の安全管理については国が一元管理しなければならないはずで,やらなくていいことは早々にちゃっかりと手を打っておきながら,一元管理の体系作りなどやるべきことは決してやらないという我が国官僚主義の典型例がここにもある。この我が国特有の官僚主義の所為で,大震災と原発災害で被った不幸がどれだけ倍加されたことだろう。これじゃ,戦時中と全く変わらんよ。
 がれき広域処理に疑問を持つ人に対し,トンデモの一種と偏見を持っているあなた,広域処理とはまずこのごまかしから出発していることをよく認識してもらいたい。

 本報では広域処理の放射能安全基準について,より具体的に指摘する。

 (6)焼却と埋め立ての違い,バグフィルターの問題

 従来の原子炉等規制法(など)に基づく処理方法は基本が埋め立てにある。その埋め立ても放射線量が1mSv/year以下となるように,地下何m以下などと埋め立て方法について細かく規定してある。
 ところが,今回の環境省広域処理スキームでは,焼却したあとの灰を埋め立ててそれからの放射線量が1mSv/year以下となるようにするようになっているのである。一見同じようだがここには大きな見落としがある。たとえ焼却後の埋め立て方法を従来の方法に拠ったとしても,安全基準上,大きな問題が生じる可能性は高いのである。
 それは,埋め立て後の放射線被曝は外部被ばくであるのに対し,焼却では空気中への拡散放射能によって内部被曝を招来することである。
 驚くべきことに,環境省のスキームでは焼却ガスの放射能濃度の安全レベルを勝手に決めている。そもそも,排ガスの濃度に関する従来の安全基準は一体どこにあるのだろうか?この記事をアップするに当たり,再度探し回ったが,結局現段階では未発見である。
 たとえば,以下のような基本的考え方を見ても,焼却して良いとはどこにも見えないのである。
 わが国における放射性廃棄物処理処分の規制と責任 (05-01-01-06)
 安全規制

 確かに従来の基準でもあちこちひっくり返して調べると,『焼却による減容』という文言,ないしは考え方は存在する。しかし,この場合の焼却は建前上は厳密に管理された原子炉敷地内での専用焼却炉で行われるのである。しかも,それが想定しているのはせいぜい10トン程度の焼却量である。これは焼却炉の規格を守ることで焼却ガスの問題をクリアする行き方だと思う。
 しかるに,環境省スキームでは放射能など何も対応していない一般の焼却炉で行おうとするわけで,この障壁をバグフィルターというもので乗り越えようとしている。だが,そもそもこのような簡易方法で放射能が除去できるのならば,原子炉内でも高度な焼却設備など必要が無いはずである。

 となると,次にバグフィルターの問題にぶち当たる。ところがこれまた,バグフィルターの性能や機能を環境省が勝手に決めているのである。その除去機能を証明するために焼却実験を何度かやって,放射能除去性能は99.9%であると宣伝しているが,このような肝心なことをなぜ第三者(反対者も含めて)を交えて,客観的な試験で証明しないのだろうか?もうすでに国はまともなことをやっても信用されない状況に陥っているのだから。(無論,信用があってもそのような姿勢は不可欠である。そうしないことそのものが不信の元凶なのであり循環しているのだが。)

 話題になった島田市の試験焼却の様子を考えてみよう。ここでは民間の調査チームが,セシウムの物質収支を見積もって,セシウムの除去率は60%程度であると発表した。これがもしホントなら衝撃的な話である。パピヨンは残念ながらまだ検証していないので,どちらの言い分に分があるか,まだ断定を避けている。しかし,これに反論する環境省の言い分が少しおかしい。次にある。
 よくあるご質問より
Q13 静岡県島田市が2月に行った岩手県山田町の災害廃棄物(木くず)の試験焼却の結果について、「10万ベクレルが行方不明」「バグフィルターによる放射性セシウム除去率50~60%」といった指摘がありますが、本当でしょうか?

A13 本当ではありません。
「10万ベクレルが行方不明」「バグフィルターによる放射性セシウム除去率50~60%」との御指摘は、様々な仮定を置いて計算された結果ですが、その仮定には適切ではないものが含まれています。例えば、煙突出口の排ガス測定結果が検出限界以下であったものを、検出限界ぎりぎりまで排出されているという仮定を置いています。
島田市の調査結果からバグフィルターによる正確な除去率を求めることはできませんが、煙突から排出される排ガスの放射性セシウム濃度は検出限界未満※1となっています。安全性の目安となる値(排ガス:セシウム134は20ベクレル/m3、セシウム137は30ベクレル/m3、焼却灰は8,000ベクレル /kg)を大きく下回っており、安全性の面で全く問題ありません。また、排ガスのばいじん濃度も定量下限(0.004~0.005g/m3N)未満であり、バグフィルターのばいじん除去性能が正常に働いていることが確認されています。
バグフィルターによる除去率を正確に求めるためには、バグフィルターの前後で排ガス中の濃度を、検出下限値を大幅に下げて測定する必要があります。環境省が行った別の調査結果によれば、除去率が99.9%以上と計算されています※2。
詳しくは、「島田市の試験焼却データに関する見解について」をお読み下さい。


 2箇所の下線部において,この言い訳はおかしい。最初のは,「検出限界ギリギリまでもし放射能濃度があれば」,と仮定することはなんら間違いではない。そこまでは無いかも知れないし,あるかも知れないのである。それがいやだったら実験をもっと精密にすれば良いことだ。また,二番目の下線部は,別の調査結果で除去率が99.9%だったことを言うのであるが,なぜこの試験焼却でそれと同じような実験をしなかったのか,勘繰れば,第三者(疑念を持った)が存在すれば証明できないからではないのか,となる。まるで,超能力者が,疑念を持った人がいるから成功しないと言のと同じような感じだ。

 真実は60%と99.9%の間にあると思うが,それであっても大量のがれき焼却により大量の放射能が大気中に無防備に放出されるのは間違いが無い。

 まあ,要するに,焼却処理は外部被曝と内部被曝の危険性の違いを区別していない重大な見落としがある,ということである。内部被曝を問題にしていない人たちは,自分だけの見解を押しつけてはいけない
 大気中に拡散されると,子供も内部被曝する。また,濃度だけを管理する発想であるが,クリアランスレベルである100Bq/kg以下であっても,通常の再利用(コンクリート壁とか)と焼却処理とは危険度が大違いである。さらに,その濃度レベルであっても1トン焼却と数10トン焼却では,たとえクリアランスレベルでも被曝量は全く違うはずである。

 以上のことから,さらに言えることは,たとえ被災地内であっても,がれき処理は焼却処理しない方がよい,ということである。焼却処理するならば,必要最小限を福島第2原発内など,東京電力の原発敷地内でやるべきである。

【注1】 従来のものは,経産省保安院(および原子力安全委員会)管轄の原子力発電関連で生じたものも文部科学省管轄の学術的原子炉で生じたものも原子炉等規制法(など)で規制される。また医療現場で発生した放射性廃棄物も処理を細かに規定されている(医療用RI廃棄物の処理 (05-01-02-06))。
わが国における放射性廃棄物処理処分の規制と責任(05-01-01-06))には,「原子炉等規制法」に基づく廃棄の事業は、経済産業省が所管している。「放射線障害防止法」関係は文部科学省が所管し、「医療法」・「薬事法」関係は厚生労働省の所管となっている。と書かれている。
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by papillon9999 | 2012-05-27 21:55 | Comments(0)