アルバイシンの丘
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低線量被曝の真実(10:DDREFは無関係)
 本記事は低線量被曝の真実(9:DDREFの不思議)の続編である。そこではNHKのドキュメンタリー番組低線量被ばく 揺らぐ国際基準に対し寄せられた原発推進側の抗議(「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」への抗議と要望についてby 日本原子力学会シニアネットワーク連絡会)は正当ではない(主としてDDREFに対し)ことを指摘した。



 その抗議とは,ICRPのリスク基準が低線量域(100mSv以下)でリスク線図がそのままに留置かれたという『衝撃の事実』は,DDREFの考え方を適用したからだと思わせるような内容であった。

 本記事では,DDREFはリスク線図の据え置きには何の関係もない(DDREFの考えから半分に据え置いたという理屈は成り立たない)ことを論証したいのである。(それによって,前報とは別の観点から,原発推進側の印象操作,およびそれに便乗したNHK番組批判に反論したい)。(ただし,パピヨンは門外漢だからとんだ勘違いを為している可能性はある。正当なご指摘があればお詫び,削除は厭わない。読者はその点を一応ご留意あれ。)

 そもそも,シニアネットなんとかの抗議文には巧妙な誤魔化しがある。よく抗議文を読んでみると『DDREFの考え方を適用したのでリスク線図は半分に据え置かれた』とはどこにも書いてない。そのような意味に,読者が勝手に取ってくれることを”期待した”(ような)書き方である。そして,ICRP関係者たちが放送に乗らない処で,英語でどんなことを話しているかわからんじゃないか,と思わせ,何かすり替えを行った可能性を勝手に想起させる,という戦術が採用されている。

 巷にあふれる,原発推進派のお先棒を担ぐブログ(buveryの日記を挙げておこう)やつぶやきのNHK番組に対する批判は,ほぼすべてがこのように勝手に誤解したものである。
 DDREF自体にまつわる胡散臭さ(前報に書いたように極めてあいまいで便宜的,リスク線図見直しの際に”きわめて便利に発見された理論”である)は別として,「高線量率・短時間」と「低線量率・長時間」の違いを表わしたいという,DDREFの概念自体はわからんわけではない。苦労してるなあという感じは持つが,一定の理屈は持っていると思う(前報の繰り返し)。
 ところが,これはリスク線図を半分に据え置いたことと,何の関係もないことなのだ。
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 まずDDREFは「高線量率・短時間」と「低線量率・長時間」の効果の違いを表わすのだという。そしたら,現在存在するリスク線図はいったいどちらなんだろう?
 右図を見て欲しい。高線量域から降りて来た青の直線(リスク線図)は,たぶん「高線量率・短時間」のリスクを表わしているのだろう。なぜなら,元データが原爆の時のデータを用いて作成されたとあったからだ。すると,同じ線量で「低線量率・長時間」の”効果”はその下の図の黄色の線になるはずである。黄色の線はパピヨンが仮に,「低線量率実効リスク線図」と名付けた。正式に何というのか知らないので意図のみを汲み取ってもらいたい。
 つまり,100mSv以上の線量域における「高線量率・短時間」と「低線量率・長時間」の効果の違いは,DDREF=2の時にはこの青線と黄色の線の違いであるはずだ。
 では100mSv以下ではどうなるか?低レベルの線量であっても,「高線量率・短時間」と「低線量率・長時間」の効果の違いがあるとすれば,その領域でも100mSv以上と同様,2本の直線がなければならない。それを次の図に示す。
 しかし,ICRPのやったことは・・・・・なんと,紫の直線部分をこっそり削除していたことになる。つまり「低線量率実効リスク線図」を通常の「リスク線図」として使うことにしたのである。言い換えると「低線量域では低線量率のリスク線図」を用いることにしたわけであるが,なぜ「高線量域では低線量率のリスク線図」を用いないのか理屈が整合しない。(しつこく念を押すと,低線量域にも,「高線量率」と「低線量率」があるはずなのである。)たとえ,「高線量率」の部分が直線ではなくても(LNT仮説?),「高線量率」と「低線量率」の区別がなくてはならない。
 敢えて言うならば,低線量域では「高線量率」と「低線量率」の区別をなくしたということであり,DDREFでは説明できない。
 この据え置いた理屈をもっと的確に表わすことがある。前報に書いた,『低線量部分はどうせわからないのだから』というICRPの委員の証言がピッタリ符合するのである。DDREFを口にしたICRPの事務局長だって,そんなことは百も承知。DDREFの考えから据え置いたのだ,とは全く言ってないのだ。

 ここで推進側の批判の中身をもう一度見てみよう。次のように「低線量域」と「低線量率・長時間」の効果とが並べられている。

『低線量域でリスクを引き上げなかったのは「低線量率・長時間」の効果(DDREF)を考慮したためだ』

というように。こうしてみると,すでに書いたことからつぎのことが合理的に推定できる(コロンボ式推論)。すなわち,『低線量域』と『低線量率』を混同しているということである。
 これが意図的でなかったとしたら,NHKを批判したほとんどの人が無知だったということになるだろう。もしくは意図的だったとすれば(抗議したシニア何とかの連中はこちらだろう),実に巧妙なすり替え,印象操作であると言える。だが,付和雷同組はこの可能性は少なく,前者だと思う。なんてったって,付和雷同組は無知すぎるのである。

 この100mSv以下のリスク線図が半分であることは,一見大した問題ではないように見える。リスク自体が小さいからだ。しかし,ことは数値の問題である。数値がそれを超えたら,仮に如何に形式的といえども,それは補償の対象となる。言い換えると,その数値を越えなければ,安全だという言い訳に使えるので,形式的にしてもできる限り低い方がよいのだ。たとえば何らかの非線形効果(リスク引き下げ側へ)を正当化する試みはこの一環だと思う。
 従って,100mSv以下のリスク線図を正当な位置に現行の2倍化することは,推進側にとって大きなコスト増を覚悟させることなのだ。

 以上,コロンボ式アリバイ崩しを試みた。いかがなもんでしょ?
(2/6追記:まあ,被曝リスク線図のような微妙なものは,それをひねり出すためにいろんな理屈を持ち出しているんだろうと思う。門外漢としてはその全貌を知る由もない。せいぜいできることは,もしこうだったらこうなる,という合理的な推測である。読者はそのつもりで記事を読んで欲しい。)
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by papillon9999 | 2012-02-04 23:59 | Comments(11)
Commented by 磐梯朝日国立公園 at 2012-02-05 17:23 x
パピヨンさま、コロンボ式アリバイ崩し
お見事です。
学習院大の田崎某教授なんか、
まるでゴミに感じられます。
Commented by papillon9999 at 2012-02-05 21:18
磐梯さん,どうも。
結局,低線量域と低線量率の意図的な混同,というのが証明できたと思いますけどね。
もう一度まとめると,「高線量率・短時間」と「低線量率・長時間」の効果の違いで説明するなら,なぜ低線量域にはその区別が無いのか,という矛盾です。
Commented by 磐梯朝日国立公園 at 2012-02-06 11:36 x
パピヨンさま、どうも低線量区域だけ
低線量率を適用しているのが
真相のようですね。
こんなのアリかと思います。
高線量区域ではどうして低線量率
がないのかと逆に、思って
しまいます。
Commented by papillon9999 at 2012-02-06 18:10
あ,そうか。それはそうなんだけど,それなら『低線量域と低線量率の意図的な混同』というのではないですね。そうかそうか。
それなら『低線量率という根拠のないもののでっちあげ』と言うべきなのかな?だって高線量域では使わない概念だとしたら,そう言わざるを得ない。

すると,記事の副題も『DDREFは無関係』は厳密に言えば間違いかな?
『DDREFのからくり』とか『DDREFの矛盾』とした方がぴったりだったかも。
しかし,半分に据え置きたいという強い『意志』が先にあったからこうなったわけで,元々それを実現するための低線量率という言葉なんだから,科学的事実とは無関係と言えるのだし,このままでいいのかな。
Commented by 磐梯朝日国立公園 at 2012-02-06 18:58 x
低線量域と低線量率の意図的
な混同でよろしいのではないかと。
区別が付かないまま批判の尻馬に
乗った人多かったですし。
無知で混同した人と意図的に混同
させたままにしておいた人と。
自分も混同して悔しがってました
Commented by papillon9999 at 2012-02-06 21:07
ではNHKはあれでよかったのかな?
『DDREFのような間に合わせの理論を突然作って,半分に据え置く口実とした』
というべきではなかっただろうか?うーんわからんが・・・
Commented by 磐梯朝日国立公園 at 2012-02-06 22:50 x
NHKはあれでよかったのでは。
ICRPの委員がそんな説明を
するとは思えませんし。
どっちみち、同じことをいうのに
DDREFを経由するかしないか
というだけの話なので。
Commented at 2012-02-07 18:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by papillon9999 at 2012-02-07 18:44
鍵コメさん,情報ありがとうございます。大変参考になります。

磐梯さん,とても良い記事を見つけました。

ICRP勧告の経緯と問題 そして アラーラ2011/5/13
(http://arita.com/ar3/?p=4438)

むかし陸軍、いま原発企業(2)2012/01/30
(http://ni0615.iza.ne.jp/blog/entry/2583920/)
です。特に前者はなんと去年の5月ですよ!

読者の皆さん,和製コロンボのたどたどしい推論を聞くよりも,これらの記事をご覧になった方が遥かにわかりやすいです!
しかも特に前者は専門的な観点から書かれていますので,ひょっとしたら門外漢ではないかも知れません。
Commented by 磐梯朝日国立公園 at 2012-02-08 14:20 x
パ、パ、パピヨンさま!
わかりました!
なぜ高線量区域で低線量率の
定義がないか。
すべては原発作業員のため
なんですよ!
低線量区域は原発作業労働者
の被曝想定範囲です。
年間20ミリとか5年で100ミリとか
決めていますが、低線量率の
考えがなかったら、労働者は
2倍必要になります!
Commented by papillon9999 at 2012-02-08 19:05
で・でかしたっ!ワトソン君!(え?コホン・・わしはコロンボだった・・・)
そうか,そうだったんだ!
これで完全に謎が解けましたな!やっと正体を暴いたなあ。

労働者は2倍必要になる,これを言い換えると,一人の労働者を使える時間がいずれにしても半分になるんだよ,ワトソン君!

すみませんが,しつこいけどこれを別建ての記事にしますね。ありがとう!