アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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イギリス暴動とノルウェー事件
 ノルウェー事件の直後,イギリスで勃発した暴動事件。ヨーロッパのどこで起きてもおかしくない,というノルウェー事件だったので,”ああ,またか”と思った。「寛容社会」【注1】への全面的反撃がいよいよ本格化したか,と暗澹たる気持ちになった。
 しかし,よく見てみると,どうやらこれはノルウェー事件と全く逆位相の事件であったようだ。



 ノルウェー事件の方は絶望の裡に三つも記事に書いた。(ノルウェー事件は神殿破壊(2)2011年 08月 09日,ノルウェー事件は神殿破壊(1)2011年 08月 06日,人類の限界が見えたのか?2011年 07月 25日)
これらの記事で,「寛容社会」によって右派的秩序を崩壊させられた,と信じる側によってテロ事件が仕掛けられたこと,それがいかに絶望的状況であるかについて考えた。

 一方,イギリス暴動の方はテレビで見る限り黒人系,非白人系が多く眼につくので,どうやら「寛容社会」へ受け入れられた側の反撃であるようだ。右派的秩序を守る側からすると,人の国に勝手に来ておって何を一人前の人間の面をするんじゃねえ!とという気持ちだったかもしれない。(必ずしも直接の移民ではなくても何代か前に移民で来た子孫とか)

 この暴動の発端は警察側の理不尽な射殺事件だったようであるが,それをきっかけに普段の不満が爆発したもののようである。その不満は近年,特にひどくなっていて,保守党政府の財政支出カット,それにより福祉関係の予算が大幅に減り,生活そのものが崩壊したことに依るものらしい。
 つまり,一方は寛容社会が招いた”異民”への手厚い面倒見が憎悪の対象とされ,他方はその”異民”が排除された結果の暴発であったわけである。

 もちろん,これら二つの暴力事件を対等に並べるわけにはいかない。これらはお互いさまとして相殺するわけにはいかないのだ。ノルウェー事件の方は神殿攻撃,イギリスの方は風船膨発の類であり,直接的な加害動機が全然異なっているからだ。

 しかし,根底には全く同じものが流れている。経済的理由,貧困である。その問題がなかったら,ノルウェー事件はまだ起こらなかっただろう。犯人の側にも「異民のために職を奪われる」といったような必死さが窺われる【注2】。イギリス暴動もまた貧困問題が根底にあるのは言うまでもない。

 結局,この状況は『貧すれば鈍する』という銘格言の再確認に他ならない。これは人類が動物だったころからの真理であり,未だにそれから自由になっていないということである。アダムが神に告げられた,『お前は一生,食い物を求めて額に汗して働かねばならない』(不正確)から逃れられないのだ。むしろ地上の人類がすべて農業を行うほど地球は広くはなくなった,その分だけ悪化したと言わざるを得ない。

 さらにこうしてみると,特に国家秩序というものに最大の価値を置く右翼の貧しい人々に言えることであるが,実に哀しい事実に直面することがわかる。それは,同じ国家という幻想の下,その支配層に富が偏在すること,その富は決して,国家秩序を心底から守る人々には廻って来ないのである。支配層のさじ加減一つに委ねられているのだ。しかし,そういう人々は自国民だけだったら秩序をじっと守って清貧に甘んじることだろう【注3】。これについては別記事で改めて考えたい。

 無論,左翼だって指導層の貴族化に直面して,そのうち反乱を起こすことになる。その反乱が成功した暁には,その指導者がまた貴族化する,この連鎖が続く。

 結局,右翼的秩序も左翼的人民社会も,低層民たちは社会の道具に過ぎないのである。唯一,そうではない可能性を見ることのできた「寛容社会」も拒否されると,もうどうしようもない。我々下層民の自業自得なのかもしれない。

【注1】 「寛容社会」という言葉は好きではない。社会が「寛容」してやっている,というイメージを喚起する。では,「多文化共生社会」という言葉はどうか?同意義語としてはやや範囲が狭い。たとえば同国民,同文化の底辺層への手厚い福祉,なんていうのは「共生」と言っていいだろうか?ちょっと外れているだろう。異文化との共生,のはずだから。とすればよい言葉が見当たらない。それが見つかるまでは「寛容社会」を使うことにする。

【注2】 逆に非常に豊かな社会になって,異民を排除する必要が無くなった時代でも起きる可能性はある。それは別の動機(蔑視)での異民排除だ。これは愉快犯となって直接異民をターゲットとするものだろう。 

【注3】 清貧で生きていければそれで十分であろう。しかし,異民排除という『貧すれば鈍する』状況は,この限界を超えているのだ。
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by papillon9999 | 2011-08-14 22:58 | Trackback | Comments(10)
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Commented by 灰汁狸菟簀 at 2011-08-15 20:42 x
今日のアレの式辞 

多分故意でしょうが予想通り余計な戯言ばかりほざいた
から正午の時報に黙祷が間に合わなかった!!
ホントに前代未聞、そこまで日本と日本人が嫌いなら堂々
と言えば好いのに、むしろ皆納得するでしょう。
「中朝韓様にこの国を食い荒らさせるのが使命ニダ!!」
と…
戦前の特異な一時期を捉えて日本の歴史や日本人を
全否定し批判する輩に未来はないと言いたいです。

国民ではなく市民。
日本人ではなく地球人。
自立ではなく依存。
義務はなくても権利はある。
「人権」という名の人権侵害を擁護する。
自衛や愛国を否定し、平和主義という妄想に浸る。

要するに、世界や社会をリアル、且つシビアに
捉えられない人々。未だ民主党を支持するコアな層は
こういう人々なのでしょう。
こういうアイデンティティーを喪失した人々に戦略観や
的確な判断力を求めるのは端から無理ですね…(^o^)/
Commented by 灰汁狸菟簀 at 2011-08-16 17:01 x
機械翻訳を悪い頭で振り絞って解読し直してみました。
http://www.adamsmith.org/blog/justice-and-civil-liberties/what-really-caused-the-london-lootings%3f/

>中央集権的で非人格的な「福祉国家」が今回の暴動の
>原因である。失業者や生活保護受給者は顔の見えない
>国家から当然のごとく失業保険などの各種のベネフィット
>を受け取る。そして、一人で働かなくても生きていけるから
>家族・地域社会の絆は崩壊する。さらに人々の勤労意欲も
>削ぎ、失業率を増加させ格差も拡大させる。このことが
>根本的な暴動の原因である。失業や格差・人々の
>規範の緩みなどは「過剰な福祉制度」の結果起こっている
>兆候であって暴動の真の原因ではない。

地方自治体・地域社会による顔の見える自発的な
ボランティアや福祉制度がこういった問題を解消するのか
も知れません。最もここまで砂漠化した社会じゃ到底
無理だろうけど…
Commented by papillon9999 at 2011-08-16 18:26
よくもまあ,あんな気持ちの悪い式辞なんぞを読んだり聞いたりする気になるもんですな。耳が汚れたでっしょ。やめとけばよかったとに・・・
Commented by papillon9999 at 2011-08-16 18:28
>機械翻訳

おおーっ!なんか新しいことを仕入れることができそうな気がするじゃん!さすがはインテリ,灰汁さん。

>ボランティアや福祉制度がこういった問題を解消するのか
も知れません

このあたりを頼りにパピヨンも考えてみますじゃ。
Commented by pulin at 2011-08-17 05:52 x
おはようございます。

秩序は国家が恣意的に決めるよりも、政府の介入を極力避け、市場原理に任せておけば、自ずとうまく、人が決めたのよりも理想的な状態に落ち着く、とするのが新自由主義ですね。
それはとりあえずいまのところ経済秩序に限った話になっていますが、新自由主義学派には、社会のあらゆる秩序も市場原理に任せるのが望ましいとする考えも強くあります。
国家が成文法を定めなくても、経済秩序と連動する形で、あるいはその上部構造として、社会秩序も決るとするわけです。
ここは「経済的自由なくして個人の自由も政治的自由もなし」という古典派の自由主義の考えを悪用して、経済的自由が後者の自由を制御すると考えるようです。古典派のいうのは、個人的自由・政治的自由が確立していなかった当時、だからこそ自由のために経済的自由を国は人民に与えよ、という趣旨なのですが。
新自由主義は究極的に無政府主義志向なので、新自由主義派には既存国家秩序を厭う左翼からの転向組がかなり流れ込んでいます。
Commented by pulin at 2011-08-17 06:08 x
彼らは革命による下からの国家の転覆、国家の解体から転じ、国家が自ら新自由主義化することで上からの国家の自壊を夢想しているのでしょう。しかし、国家の解体はやはり夢想でしかなく、社会主義国家が社会主義を断行するため抑圧的になるのと同様、新自由主義国家も新自由主義・市場原理主義を断行するため市場は自由にするかもしれませんが、その障壁になるものを排除しようとどんどん抑圧的になっていきます。
政治によるよりも市場が決めるべきという志向が根底にあるので、国民による政府のコントロールも利かなくなっていきます。
Commented by pulin at 2011-08-17 07:15 x
ロンドンの暴動の話ですね。
自分から暴れる度胸もないのに「下層階級」の暴動が起きてそれが政治変革につながらないかと期待しているインテリ層やリベラル層は卑怯者であるというのが私の認識です。
Commented by papillon9999 at 2011-08-17 15:10
pulinさん,本来の野球に戻って快打!ですね。新自由主義ほど卑怯なことはないでしょう。
だって,破綻したら破綻しないよう国家が助けてくれることを期待するからです。そのような勝手なことができるためには国家の権力を増大することになります。自己矛盾も甚だしい。

これからは国家は適切な配分を行う機関として重要になると思われます。何でも限りがあるからです。
Commented by pulin at 2011-08-17 17:41 x
新自由主義、市場原理主義の狡猾なところは、世の中が歪んだ抑圧的状況になっても市場がそれを選択したから必然である、と合理化し、あたかも自然法則でそうなった、あるいはもっと本質的には神がそうされたのだとみなし、人間の理性による是正を拒むことになる点ですね。
見せ掛けに過ぎない市場の公平性にこだわるのも、何の不正もせずとも自然にそうなるのだというアピールです。
Commented by papillon9999 at 2011-08-18 08:45
>見せ掛けに過ぎない市場の公平性

仰る通りですね。”神の見えざる手”というのですが,神は金のある方が好き,それどころか金のある方と裏で結託しておられます。