アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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万邦無比の国家(4)明治初期の皇国史観
 これまで明治政府は最初っからがちがちの神話的皇国史観を作り上げ,一貫してそれのもとに世界に進出して行こうとしてたのかと思っていた。しかし,実は違っていたようなのである。初期の頃は世界に恥じない「客観的な歴史」を確立しようとしていたのである。見直した。どうぞ先を!



2.大日本編年史

 その意志が『大日本編年史』である。最初に本のP37から引用してみよう。

 近代日本において、公式の歴史が常に物語的歴史であって「客観的な歴史」でなかったことは周知の事実である。近代日本が天皇親政という国体の上に成り立っており、万世一系神話を不可欠の要素にしていた以上、それはやむを得ないことであった。なにしろ、『古事記』『日本書紀』の神代の箇所に書いてある事柄を歴史の中に組み込まなくてはならなかったのだから、それは当然であった。
 しかしだからといって、近代日本に「客観的な歴史」を確立しようとする努力が全くなかったのかというと、決してそうではなかった。その努力は存在した。王政復古によって生まれた明治国家が、その正当性を歴史的に証明するためにおこなった『大日本編年史』がそれであった。


 これは三条実美を中心に、太政官に修史館が設けられて行われたそうである。この編年史の編纂には以下のような意図があったという。

 第一には:朝廷一家の歴史や為政者の立場の歴史を書くのではなく,「全国・全国民」の歴史を書くこと(全国津々浦々にわたって古文書調査を行った)
 第二には:歴史を道徳や物語としてではなく、事実に基づいて書くこと
 第三には:日本独自の価値観に拘束されず、より普遍的な価値観で書くこと

 こういうことのため,編纂者たちは,たとえば太平記のみに出てくる南朝の忠臣『小島高徳』【注1】の実在を否定し、編年体でしかも漢文【注2】で記述したのであった。

 要するに,これから立憲国家としてやっていくことになる日本国を,普遍的な価値観を持った国民が支えていく,そのような国家像を明治の元勲たちは描いたようである。

 なんか,清新の気迫というか,明治政府の生き生きとしたルーキー精神が溢れているようである。これはこれまでのパピヨンのイメージを根底から覆すものである。そうだったのか!
 最近は明治維新の意義を実に否定的に捉えたがっていたパピヨンであるが,こういうことなら話は違うではないか。このあたり,もう少ししっかりと確認せねばならない。パピヨンの歴史観が変わりそうだ。(大方のリベラルの方もそうなのではないだろうか?)

 しかし,しかし,この清新な試みは残念ながらあえなく潰え去ることになる。1893年,時は伊藤博文第二次内閣。この編纂事業は文部大臣井上毅によって中止させられるのである。
 それはいったいなぜであったろうか。そしてどのように変えられたのであろうか。また細切れになるが,時間の都合上,ここで切らねばならない。続きをお楽しみに。

【注1】 小島高徳という人物は全く知らなかった。勤皇の忠臣伝説として後の皇国史観では重視されたという。恐らく楠木正成のような役割ではなかろうか。しかし,実在が確信できない場合は,いかに忠臣といえども編纂史から除いたのである。

【注2】 編年体というのは総合的に経年的に記述する方法で,一般にもわかりやすい。漢文というのは中国文化とも通じているという意味だろう。国民にも,漢文ぐらいは教養として備えよ,というメッセージだろうか。
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by papillon9999 | 2010-12-22 00:19 | Trackback | Comments(3)
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Commented at 2010-12-22 22:28
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by pulin at 2010-12-25 07:00 x
これを醒めた目で見れば、「中立的」な修史はありえず、修史とは結局、今現在を正当化する(昔は悪かった論)か、今現在を否定する(昔は良かった論)かのどちらかに傾いていかざるをえないのではないでしょうか。
Commented by papillon9999 at 2010-12-25 21:25
その点に関して,中国の歴史書というか感性は面白いですね。万世一系(というふれこみ)はないので,自分の世の正統性をいかに主張するか,です。
仮にクーデターで倒しても,それは主人に忠ならざる不当を働いたとして,正統性は希薄になるわけです。
そういう場合でも,何らかの引き継ぎの正当性を作ったのではなかですかね。だから,自分に引き継いでくれた王朝が不当だったら,それに引き継ぎを頼まれた自分も不当になるので,あまり悪口は書けなかったでしょう。
いかに不正を正したヒーローとなっても,それが即,王様として正統性を持てるわけではない。
元寇の元の時はこの原則が崩れているのでしょうが。
(なあーんて,素人探偵のコロンボ式推論でしたっ)