アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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性暴力被害と裁判員制度
 裁判員制度については以前に記事を書いたことがある(日本共産党と裁判員制度)。奇しくも共産党に絡めて書いたものだったが忘れていた。この記事でも共産党の心性を問題にしていたのだった。
 本記事では当時気がつかなかった,性暴力犯罪を裁判員制度に掛けるとどんな不都合なことが生じるかについて書く。それで,ついでながら,この不都合に対して共産党自身は現在ではどのように考えているのだろうか?ぜひ見解を知りたいものだ。



 性暴力犯罪に対する裁判員制度の問題点についてはもう多く議論されている。整理する時間が取れないため代表的に以下を挙げておくだけにするが,そこからさらに遡っていただきたい。

 あなたは悪くない
 「裁判員制度における性暴力事件を考える」
 性犯罪に市民感覚?

 私もこのことを聞かされるまではちっとも気がつかなかった。そして,聞かされた後は,少なくとも性犯罪だけは裁判員制度を除外しなければと思い,三番煎じではあるが書いておく。(しかし,本来は全廃が筋であり,完全撤廃を強く求めておく=文末に書く。)

 この問題に関するたんぽぽさんの所で交わされた議論を拝見していて,以前書いた記事(安田弁護士の人権感覚)を思い出した。あの光市母子殺人事件にまつわるエピソードである。

 この事件の加害者の主任弁護士は人権派の弁護士として,人権派に高く評価されている人物であるらしい。しかし,私自身は,記事にも書いたように,この人のことを人権感覚の頓珍漢な弁護士だと思っている。まあ,それはともかく,この弁護士が何をやったかというと被害者への二次加害を堂々と全国民の前でやってのけたのである。そう,記事の時には言葉として出てこなかったが,あれは確かに二次加害というべきだろう。

 一般的な話であるが,加害者の弁護をする時に,弁護士としてはその殺意,犯意を軽減しようとするのは当然の行為であろう。問題は,そういう目的は被害者を貶めることによって果たそうと試みられることが多い,という事実である。そしてこの安田弁護士もやってしまったのである。記者会見でレイプ殺害時の様子を生々しいイラストつきで滔々と述べ立てていた。イラストでは着衣はあったものの顔は描いてあり,右手にはナイフを握らせていた。被害者はナイフなど持っていなかったのに,殺意を割り引くための印象操作のためにナイフを握らせていたのだ。それを裁判所でならともかく,記者会見でやってしまった。

 要するにここで言いたいことは,弁護人は加害者の犯意を小さく見せるために,何でもやってしまうということだ【注1】。たとえば強姦殺人だったら,「最初は合意の上だったが,後から暴れだした」,「先に誘ったのは確かに被害者の側だった」,「手はこう向いていたのだから,被害者はなんでそこまで受け入れたんだ」,などといった「被害者の落ち度」が生々しく語られるのである。(二次加害も参照) 場合によっては人形を使って実験が試みられることもあるかもしれない。
 すると被害者は,「そうではありません,こうだったのです」というような反論をしなければならない。それを一般市民の前で強要される(弁護士を通じてにしろ)のである。司法関係者のみに対してはそういうやり取りは当然覚悟したことであるが,裁判員という一般市民の前では到底耐えられないだろう。

 以上は,品格高邁な人が裁判員になった時のことを想定してさえ言えることを書いた。だけど,実際には下世話な好奇心満々の人間の方がはるかに多いことは自分自身を考えてみれば言うを俟たないだろう。それこそ”マニア”が紛れ込むかもわからないし,そうでなくても気味悪い好奇の眼が奥底に隠されていることだろう。市民の良識や品格はそこまで育っていないことはくどくど書かなくても同意できるはず。
 中には,司法関係者より立派な良識・品格を持った人が裁判員になる可能性はもちろんある。しかし,そういう人の存在確率は5%未満。そういう人を期待してこの裁判員制度を作ってはいけないのは自明だ。

 このように,性暴力被害の裁判は特殊な状況となるのであり,裁判員制度にはなじまないことは明らかである。

 ところで,性暴力以外の犯罪についてはどうだろうか?事件に関しては何の落ち度もない被害者について,加害者の弁護士は被害者のプライバシーをあることないこと利用したいだろう。その結果,被害者のプライバシーは洗いざらい,白日の下にさらけ出される。たとえば事件とは関係のない不倫交際,病歴,禊の済んだ犯罪歴,その他いろいろである。
 これだって,司法関係者に対してさらけ出されることはやむをえないだろう。しかし,無用の人に知られていいはすはない。

 もちろん,性暴力被害者における裁判員忌避の心情はぜんぜん異なるだろう。深刻さの質がまったく違うことはよくわかる。しかし,性暴力以外の犯罪に対しても,被害者への不要な冒涜を引き起こすのも確かである。それとも,こちらは市民感覚が必要とでも言うのだろうか?

 最後は,裁判員制度の忌避要求が,性暴力犯罪のみに偏っているような気がして敢えて問うてみたく書かせて戴いた。裁判員制度全般の忌避要求につながらない理由を知りたい

【注1】 顧客である被告を弁護するのに,どんなことでもやっていいかというと,そうであってはならないと思う。それを考察した記事がこちら,刑事弁護の限界である。ぜひお読みいただきたい。
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by papillon9999 | 2009-07-14 20:29 | Trackback(2) | Comments(2)
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Commented by たんぽぽ at 2009-07-15 23:13 x
わたしのブログに、コメントとTBありがとうございます。

>裁判員制度全般の忌避要求につながらない理由を知りたい。

わたしのスタンスは、「性犯罪に関しては裁判員制度は危険」です。
裁判員制度一般については、もともとなにも語っていないです。

理由はいたって簡単で、性犯罪以外のことはわからないからです。
一般的な裁判員制度の問題も、つぎの記事に書いてあるくらいの、
通り一遍くらいしか知らないので、議論できるほどの知識はないです。
ttp://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/21929301bf51872669470a5abd17bbeb

したがって、「わからないことは言わない」という原則を、
守ることにしているしだいです。
(あまりご期待に添えないお答えだと思うので、恐縮だけど...)
Commented by papillon9999 at 2009-07-15 23:28
ご返事どうもありがとうございます。

一般凶悪犯罪は裁判員制度が適している,というわけではないのですね。了解しました。

>あまりご期待に添えないお答え

もし適しているというお考えならば,どんな理由があるのか楽しみだったので。
でもそうでないということですので,やはり期待は実現しないことになるのね(^o^)