アルバイシンの丘
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随想や意見,俳句(もどき)

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ユダヤ人とは何か(4)建国運動
 このシリーズ記事(1)(2)(3)で,少なくともユダヤ教だけがカルト的であるということはなく,さらにその集団の思想である「選民思想」というものも世界から大きな誤解を受けてきたことを述べてきた.
 するとそういう連中が二千年以上にも亘って熱望してきた「イスラエル」国家建設というものを一体どう考えればいいのだろうか.次のテーマとなるべきものはこれだ.



 そういう民の,イスラエル建国への熱望・希望=シオニズムは野望なのか,宗教的な独善なのか,それとも正当な希求なのか.それを見極めることは人類の幸せのために必要不可欠のことと信ずる【注1】.今パピヨンとこの記事の読者は,少なくとも『選民思想』は『シオニズム』とまったく関係がないと言われても驚かないまでになっているはずだ.
 パピヨンの整理によればシオニズムの切り口はいくつかあって順次考えていく.

(1) 宗教集団が国家を求めることの問題
 これまでの記事では,ユダヤ民族とは,『生物学的な血ではなくて宗教によって定義づけられた「民族」』である【注2】とした.そういう集団,宗教集団が一つの国家というものを求めることに正当性はあるのか,ということである.
 疑義があるとすれば,一つの宗教はそれが何であれ,それを信仰する集団の主観的価値観に過ぎない.従って,それに基づいた要求など普遍性を持ち得ない,という理屈が成り立つのである.しかしながら,これは比較的簡単に片が着く問題である.後で見るようにもっと大きな問題に吸収されてしまう,
 シオニズムのような大規模集団ともなると,これは「やむをえない」と答えるしかないのだ.日本国憲法のおかげで政教分離の考え方が高いレベルにある日本では想像できないが,よく見ると世界は数多くの『宗教国家』に占められているではないか.
 イスラム国家があればキリスト教が国教となる国もある.チベット仏教の地域もある.ある宗教がその国の仕組みを形作っている国は少なくないだろう.そうなればユダヤ教国家もありうるはずだ.なにしろ,あのオバマ大統領が聖書に手を当てて宣誓したばかりなのである.宗教的価値観と国家がしっかりと分離できている国は非常に少ないはずである.
(逆に,あの創○学会だって,いつかは池○先生の額を国旗に戴く国を夢見ていないとも限らないのだ!)
 
(2) 建国の地と先住者との優先権の問題
 これこそが現実的に最大の問題であったはずである.反ユダヤ感情が比較的少ない日本でも,まともな人だったらそれまで住んでいた人たちを押しのけてズカズカと踏み込んでいった,というイメージがある.それが『選民思想』の誤解と相俟って,強力な反イスラエル感情を生み出すのだ.
 少なくとも1948年のイスラエル建国の最初の時点では,忽然とイスラエル国家が誕生したのは先住民にとっては酷いことだったに違いない.ただし,これにも多少の誤解があって,近代シオニズムの機運はすでに19世紀半ばからあり,1948年の建国は約一世紀に亘るユダヤ民族の血の努力の結晶だったのだ.
 ただ,このことで,先住民を追い出したことの理不尽さが割り引かれるものではない.先住していたパレスチナ人たちにどのような配慮があったのか,もしイスラエルと国連・世界の国々が共に,排除されたパレスチナ人たちに最大限の配慮を惜しまなかったら,世界歴史上最大の難問もこれまでこじれていなかったかもしれない.「迫害」の本でも著者らがそういう点を配慮した記述は見つけられなかった【注3】.
 ではイスラエルはどこに建国すべきであったのか【注5】,どこにも建国すべきでなかったのだろうか.こうして,なぜシオニズム運動が生じたのか,という問題にぶち当たる.

(3) 反ユダヤ,反シオニズムの問題
 「迫害」の著者は書く.

『(反ユダヤ主義者は)ホロコースト以来,反ユダヤ主義と自ら標榜することは憚られるようになったが,その代わり反シオニストと称するようになった』

 この意味はホロコースト讃美者と思われるため反ユダヤとは言わないが,反シオニズム(イスラエル建国とほぼ同義)とは平気で言えるというのである.しかし,反ユダヤと反シオニズムはまったく同じことだと「迫害」の著者はさらにいう.

『仮にイタリア人に対してイタリア国家を認めずに,自分は反イタリア人ではない,と言えるはずはないではないか』

 つまり,イスラエル国家とユダヤ人を区別することはもはや不可能なのである.ユダヤ人たちもイタリア人たちが国家を求めるのと同じ理由でイスラエル国家を欲するのである.ユダヤ人たちだけが何千年もの間,他民族の間で暮らすことを余儀なくされ,しかし決してそこに同化されなかった.しかし,数々の迫害の受難を蒙り,ついに19世紀半ばになってシオニズムの機運が高まるのである.
 考えてみるとキリスト教は受難,受難と言いながら自ら迫害の加害者となることが多かった.ユダヤ教はまったく逆である.荒々しい神の『戦い滅ぼせ!』の勇ましい掛け声に反して,受難ばっかりの歴史だったのである.「迫害」の327ページには次のように書かれている.

==================
・・・シオニズムは,ユダヤ人がどこにいようと少数派でいる必要がなく,ユダヤ人であるがゆえに同胞市民の迫害を受けずにすむ唯一の国家の中に生きる機会を与えてくれる.少なくとも理屈から見れば,シオニズムは反ユダヤ主義の理想的な解決法と言える.
==================


 このように,ユダヤ民族が彼らのための国家を建国することには十分正当な理由,事情が存在する.そのように追い詰めたのも世界の側だからだ.(改めて,シオニズムは選民思想とは直接関係はないことも確認できる.)
 従って,繰り返しになるが,問題はパレスチナという場所とそこの先住民の処遇である.難民となったパレスチナ人たちは本当に気の毒だった【注4】.だからといってしかしもう元に戻すことはできないのである【注5】.
 何はともあれこうしてとにかくイスラエルと言う国家ができた.今,それを元に戻す,つまりイスラエル国家を解体するのは,ユダヤ人を絶滅させるしかない.著者らもそれを断言している,『すべてのユダヤ人は全滅するまで戦うだろう』.
 となると,解決策は一つ,共存を図るしかない!その共存のためには再度相互理解から始めなくてはならない.イスラエルの側にも安心させる必要があるのだ.そして平和的共存は可能である.なにしろ,ユダヤ教は何千年にも亘って棲み分けができてきたのだから.
 
(4) 宗教問題ではなくて民族運動だ
 以上のように見てくると,ようやくイスラエル建国運動の本質的意味が浮かんでくる.それはやはり宗教を抜きにしては考えられない問題である.しかしそうではあっても,現代においてはもはや宗教運動と解してはならない.それはすでに民族運動なのである.
 すなわち,それはチベット問題,アイヌ問題,イヌイット問題,はたまた琉球独立問題,その他世界中のあらゆる場所で生じている人種・民族問題の一つと捉えるべきである.
(現代における種々の紛争を,『(最終的?)宗教戦争だ』と尤もらしく叫ぶ人が少なからずいるが,パピヨンはこういう捉え方にまったく与することはできない.これでわかったような気になった人は眉に唾をつけてネ!)

 ということで,次回はこのシリーズ最終回の予定で,民族問題とユダヤ人について総合的にまとめてみます.

【注1】 本記事の認識を改めて確認しておくが,ユダヤ・イスラエル問題は世界歴史上,最大の難問である.これを何とか収めることが人類の幸せに必要不可欠なことであって,そのためには今千年に残る非道を犯しているイスラエルとはいえ,その言い分を理解する努力が反ユダヤ側に求められる.無論,ユダヤ側の譲歩も必要である.双方が歩み寄るためにも相互理解が必要なのである.パピヨンごときがすみません.

【注2】 ただし,ユダヤ人といえばある人種的な特徴を備えているイメージが強い.それについては次回の記事のテーマとなる.

【注3】 追い出された先住民にとっては「配慮」どころではないことは解っている.しかし,今から元に戻すことは不可能である.

【注4】 パピヨンが何を言っても始まらないが,今からでも遅くない.イスラエル解体ができない以上,世界の責任でパレスチナ難民の保護,支援をしなければならない.せめて.

【注5】 と書いて突然閃いた!イスラエル建国の地はアメリカ合衆国の一部でどうか!そこをイスラエルが買い取るのである.そこにすんでいる米国国民もイスラエルが補償する.世界も支援する!
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by papillon9999 | 2009-02-10 22:19 | Trackback(2) | Comments(0)
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